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74.夜明け前 ****


廊下に出ると外は真っ暗闇。ふあ〜…と大きな欠伸をする笹川さんの姿に、自然と笑みが零れた。



「なあ、名前」

「はい?」

「本当に良いのか」



遠慮がちに囁かれた言葉が何を意味しているのか直ぐに理解する。だから私は「はい」と頷いた。



「もう決めましたから。絶対に逃げないって」

「…そう、だな。お前はそう言う奴だからな」

「はい」



物音一つしない静かな廊下。響くのは二人分の足音だけ。けれどその音が突然聞こえなくなった。隣を歩いていた笹川さんが立ち止まったのだ。





「死ぬなよ――名前」





そして、告げられた言葉に私はヒュッと息を飲む。暗闇でも良く分かる、笹川さんの真剣な瞳。

泣いてはいけない。分かっているのに、一粒の雫が頬を流れ落ちた。私は堪えきれなくなって。



「それは私の台詞です」



彼の胸に飛び込む。



「先程雲雀さんにも言われたじゃないですか!自分の心配をしろとっ」



笹川さんの胸に顔を埋めて、私は声を上げた。その間にも一粒、もう一粒と涙は更に溢れ出す。



「…泣くな。お前に泣かれると、どうすれば良いのか分からなくなる」



そう言って私の背中に腕を回す笹川さん。



「俺の事は心配するな。言っただろう?“極限に敵を打ち砕く”と…」



瞬間、その腕に力が籠もって私は強く抱き締められる。抱き締められた腕が苦しかった。でもそれ以上に嬉しくて…。



「だから信じろ。俺の言葉を。俺達の強さを」



私は笹川さんの胸に顔を埋めて何度も何度も頷いた。不安もある。恐怖もある。でも私達は一人ではない。仲間が居る。

だから終わらせよう。信じる仲間達と共に。この悲しみに溢れた世界を、希望に満ちた未来へ変える為に…。私達はそれぞれの道を歩き出す。










◇ ◇ ◇


深夜。カリカリと微かに聞こえる耳障りな音に綱吉は目を覚ました。

原因を確かめる為、眠い目を擦りつつ廊下に出ると、同じく音に気付いた山本と鉢合わせする。



「ツナも聞こえたのか」

「う、ん。何なのこの音?一体何処から…」

「アレみたいだな」



そう言ってリボーンが指し示した方を見ると、廊下の向こうから、着流し姿でこちらに歩いて来る雲雀の姿を発見した。



「……寝ぼけて僕の所まで来たよ」



彼が手にしているのは獄寺の匣兵器、嵐猫の瓜。


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あきゅろす。
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