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74.夜明け前 *****


「Σな!!てっきり匣に戻ってっかと!…瓜っ」



雲雀から瓜を受け取ろうと獄寺が手を出した瞬間、瓜は主人である獄寺の顔にダイブ。しかも、顔をひっかく始末だ。

夜中だと言う事も忘れ、ギャアギャアと騒ぎ出す綱吉達…。しかし、そんな彼らをこの人物が放って置く筈がなかった。



「…夜は静かにね…」



底冷えするような低音。



「君達…風紀を乱すとどうなるか…知ってる?」



元・並盛中学風紀委員長、雲雀恭弥だ。彼は愛用のトンファーを構えて綱吉達を睨みつける。
経験上、十中八九咬み殺される事を覚悟していた綱吉達。だが予想に反し雲雀は武器を納めた。



「…眠い…今度ね…」



小さく欠伸を零しながらフラフラと踵(きびす)を返す雲雀。どうやら本当に眠いらしい。



「待て雲雀!…あ、あんがとなっ。いずれこの借りは返す…ぜ」

「…期待せずに待つよ、獄寺隼人」



再び歩き出した雲雀を今度は綱吉が呼び止める。



「雲雀さん!」



呼び止められた雲雀は視線だけを綱吉に向けた。
刹那、綱吉はぎゅっと拳を握り締め、雲雀に向かって頭を下げる。



「名前さんを頼みます」



悔しかった。誰かに名前を任せなければならない事が。自分が名前を守れない事が。悔しくて悔しくて堪らなかった。

本音を言うと彼女も連れて行きたいと言う思いもある。離れたくなくて、傍にいて欲しくて。『一緒に行こう』と何度言い掛けたか分からない。
けれど冷静になって気付くのだ。自分の力では彼女を守りきれないと。

だから託す事にした。ボンゴレ最強の守護者と言われる雲雀恭弥に…。彼ならきっと名前を守ってくれる。だって、雲雀自身が彼女を守りたいと望んでいる筈だから…。

けれど返って来たのは、



「嫌だ」



予想外の答え。驚き顔を上げた綱吉に雲雀は冷ややかな眼差しを向ける。



「…あの子を守るなら僕は自分の意志でやる。……死んでも君の頼み何て聞くつもりは無いよ」



そして一瞬だけ口元を緩め、彼はこう告げた。



「…君と違って――僕は“強い”からね…」



闇の中へ消えて行く雲雀を見送りながら、綱吉は初めて思ったと言う。

――彼に…雲雀恭弥に

“負けたくない”と。










もう直ぐ朝が来る。

全てが始まり、全てを終わらせる為の朝が…。

恐れ・不安・希望。それら想いを胸に若き10代目ファミリーは動き出す。



夜明け前


(未来を変える為に)


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あきゅろす。
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