私はそれが嬉しくて更に笑みを深めた。でも、それよりも嬉しかったのが…今こうして獄寺さんと自然に話せている事。
「獄寺さん、明日は……頑張りましょうね」
私は瓜ちゃんの頭を撫でながら小さな声で呟く。
本当はもっと訊きたい事があった。もっと話したい事があった。…でも今はこれで良いのだ。
皆が明日を乗り越え無事に戻って来た時、今まで話せなかった分を沢山話そうと私はそう思った。
◇ ◇ ◇
――その夜。私は笹川さんと共に雲雀さんのアジトを訪れていた。
「いよいよだな」
雲雀さんと、笹川さんと、草壁さん…。四人で夕食を囲んでいた時、不意に笹川さんが口を開く。
「死ぬなよ、雲雀」
「……僕より自分の心配でもしたら?」
「元より俺は極限!敵を打ち砕く!!」
二人の会話を聞きながら、改めて明日が決戦日なのだと思い知らされる。私は手にしていた箸を置き、両手を握り締めた。微かに手が震えている。
これは何に対しての震え?戦う事への畏怖?それとも大切な人を失うかも知れないと言う…恐怖?
「名前」
刹那、名前を呼ばれて顔を上げる。見ると、雲雀さんが私を見つめていた。まるで自分の気持ちを見透かされたような、そんな彼の漆黒の瞳に私の心臓はトクリと跳ねる。
「怖いの?」
いや、違う。彼は見抜いていた。私の畏怖も恐怖も。この人は全て…。
「はい、怖いです。自分が戦う事も、皆さんを敵地に送り出す事も、怖くて、怖くて…仕方ない」
だから嘘は付かない。だって雲雀さんには無意味。通用しないから…。
「――でも、逃げるつもりはありません。私も皆さんと共に戦います」
それでもせめて強がり位はさせて欲しかった。
敵陣に乗り込む笹川さんや幼い守護者達。そして一人で敵に立ち向かおうとしている雲雀さんの邪魔にならないように。
私も修羅の道を歩む。
◇ ◇ ◇
「さてとそろそろ行くか。名前はどうする?」
最後の一杯を飲み干し、徐(おもむろ)に立ち上がった笹川さん。時計を見ると、思ったよりも長居をしていたようだ。
「そうですね。私も笹川さんと一緒に戻ります」
「そうか」
「雲雀さん、草壁さん。今日は御馳走様でした」
二人に「おやすみなさい」と告げ、私と笹川さんは部屋を後にする。
「大分遅くなったな」
「そうですね」
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