27.嵐の訪れ ***
「…酷でー何てもんじゃねーな。特に山本武と笹川了平は重傷だ。暫く使い物になんねーぞ」
「っ……アホ牛は」
「…アイツは大丈夫だ。恐らく他の部下同様、山本達が庇ったんだろー」
(ただし、二人が庇わなければそこに居た全員が死んでただろーがな…)
シャマルは心の中で呟く。
「そうか…。そ、それでアイツはどうなんだ」
「ん?…嗚呼、名前ちゃんの事か?あの子の事なら心配いらねーよ。何処も外傷はねーし、直に目を覚ますだろ」
それを聞き、獄寺は安堵の溜息を零した。そんな獄寺の様子を苦笑を浮かべて見守るシャマル。
幼い頃から彼を知っているだけに、獄寺が名前を大切に思っているのは見ていて良く分かる。今も彼女の元に行きたくて仕方ないのだろう。
「そんなに心配なら名前ちゃんの傍に着いててやりゃー良いだろーが」
「な、何言って///」
「ヤローの心配なんざ、するだけ無駄だ。するならカワイイ子の心配だけにしろ。……それに目が覚めたて誰も傍に居なかったら名前ちゃんも不安になるだろーが」
「…っ…」
獄寺は一瞬、何かを口にしようとした。けれど直ぐに押し黙りシャマルに背を向ける。黙って部屋を出て行く元教え子の姿をシャマルは静かに見送った。全く―…、
「素直じゃねーな」
部屋を出る際、微かに聞こえた「…すまねー…」と言う言葉は、聞かなかった事にして置こう。
◇ ◇ ◇
雲雀は走った。走って、走って、走り続けて。それでも浮かんで来るのは……“歌姫の涙”。
雲雀はぴたりと足を止める。一体どうしたと言うのだ。彼女の涙を見た瞬間、身体中に電流が走ったように動かなくなった。それと同時に頭の中で誰かの声が響く。
「雲雀さん」
その声が誰のモノなのか雲雀は思い出せない。
「……くっ、」
それ所か思い出そうとすると激しい痛みが襲うのだ。雲雀は近くの壁に拳を叩きつけた。
(どうして歌姫に止めを刺せなかった?…頭の中で僕を呼ぶのは誰?)
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