考えるのは後だ!!!今は兎に角、この状況を何とかしなければ…っ。
けれど相手はあの雲雀恭弥だ。名前を庇いながらでは分が悪過ぎる。
(…くそっ、!!!どうすりゃ良いんだよ…っ)
獄寺は唇を噛みしめた。自分はどうなってもいい。でも責めて名前は、名前だけは守りたい!雲雀のトンファーが二人に向かって真っ逆様に振り下ろされる。その速さに避ける事も出来ず、獄寺は名前を庇うように抱き締めた。大事そうに強く、強く…。その瞬間だ。
ポタリ。
名前の目元に溜まっていた一粒の雫が、床へと零れ落ちた。
「……、っ……」
それを見た雲雀の手が、びくりと止まる。
「……く…っ、」
それから苦しそうに呻き声を上げ、その場に膝を付いた。一体何が起きたのか。獄寺は顔を顰めて、雲雀の様子を窺う。
雲雀の視線は一直線に名前へと向けられていた。その目には苦痛と困惑の色が見える。どう見ても今、雲雀は自分達を…否、名前に攻撃する事を……躊躇った?
「…お、前……」
「っっ、」
獄寺がその事を追求しようとした瞬間、雲雀は背を向け屋敷を飛び出して行く。
「待ちやがれっっ」
後を追おうとした獄寺だったが、腕の中でぐったりしている名前の事や、周りで倒れる仲間を放って雲雀を追う事は出来なかった。兎に角、今は全員の治療が優先だ。獄寺は携帯を取り出し、ある人物に連絡を取る。
「おいシャマルっ、緊急事態なんだ!!!急いで本部に来てくれっっ」
◇ ◇ ◇
「たく、俺は男は診ねー…何て言ってる場合じゃねーか。男を診るのは今回だけだからな、隼人」
獄寺が連絡を取ったのはDr.シャマル。古くからの知人で『女性しか診ない』ダメオヤジ。…だが、医者としての腕は確かな信頼できる人物だ。
普段から「男は診ねー」と豪語している彼だが、今回ばかりは流石にヤバイと踏んだのだろう。文句を言いながらも全員の治療を施してくれた。
「んな事より、山本達の様子はどうなんだよ!シャマルっっ」
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