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鬼ごっこ開

例えるならソコは、現代のソドムとゴモラ。

人の汚い部分だけを圧縮還元した黒の世界。人口の爆発的増加の対処の一つとして20××年に政府が考案した地下都市計画の残骸。

『とりあえずビル。でっかいビル建てようぜ』

『じゃあ、木も植えましょう。上と同じぐらい緑を豊かにしよう』

『空気清浄機も欲しいな』

『川も欲しいわねー』

『あ、やべえ。政府がもう予算ギリギリだから無駄遣いするなって。うーん。そうだ鉄骨を数本抜いてコストダウンだ』

『素晴らしい考えだわ。なら木には特別な薬を使って成長スピードを倍に』

『あ、ビルが建てたはじから崩れていく』

『あら、成長が止まらない。どんどん増殖していくわ』

『とてもじゃないが人は住めないな』

『無理ねー』

『仕方ない』

『仕方ないわね』

『『はじめかっから、なかったことにしよう』』

きっと寝不足で頭に酸素が足りなかったんだろう。馬鹿丸出しの展開だ。結局、人間にはエデンを創るのは無理だった。
代わりに生まれたのが、違法住民でごった煮になった超無法都市・ニヴルヘイム(黄泉の国)だ。もはや独立した世界に成り、社会、政治的な意味でも『上』とは離れてしまった。
麻薬売買は朝の挨拶。
闘争は昼の挨拶。
売春は夜の挨拶。
混沌を水飴みたいに煮詰めて完成した歯が溶けそうに甘いジャンク・バレル。

・・・・・・私が誰だって?おっと、自己紹介がまだだったな。
私はレオ・アンサラー。こんな名前だが一応、女だ。
着ているのが黒いスーツとズボン、白いYシャツにレベルU防弾ベストと色気のカケラもないけど、化粧をしてドレスに着替えればそこそこの美人だと思う。
乙女っていうには疑問が生まれるほど、鍛えた身体は引き締まっているけど。
細いよ私。
金色の髪は肩ぐらいで適当に切り揃えている。瞳はスカイブルー。イギリス辺りの人種かねー?
歳は数えていない。知り合いには18歳ぐらいと言われた。
なんせ、ものごころついた時からココにいたから自分の正体も曖昧なんだ。腰を振るだけ振って後はダストへシュートなんて本当に笑える話だ。とある事情で銃と戦闘技術を叩き込まれたから今日まで生きてこれた。キリスト様が目の前にいるんなら骨が折れる程ぶん殴りたい。


一の音が繋がり、咆哮となって私を襲う。


「・・・・・・!」

悪いが、話はまた今度にしよう。
私は現在進行形で追われている。

「はあ、どうだ、あの糞アマには当たったか?」

「ぜえぜえ、・・・・・・当たっていません!」

ここはイーストブロックにある廃墟ビルの集合体・ラビリンスだ。簡単に言えばファミレスで頼んだ山盛りフライドポテトのコンクリートと鉄骨バージョン。狭いわ複雑だわで間違って入った奴はたいてい餓死する。牛と人の化け物よりたちの悪い奴らもバーゲンセール並にうじゃうじゃ。

堅い床を蹴りながら、外が一切見えない通路を突き進む。頼りになるのは手に持っている懐中電灯の明かりだけだ。すっごく心細いです。

(こんどは右か)

私が片手に握っているのは携帯電話型の改造デバイスで、機能の1つ・アリアドネを起動している。ようは超音波式のラビリンスの地図だ。こいつがないと180秒で迷子になる。
薄暗いコンクリートの通路は、あちこち崩れていたり、穴が開いたり、うわっ!・・・・・・たまに坂になっていたりする。道が別れているのも珍しくない。

どっかに桃か櫛でもないかなー?

(追っ手は・・・・・・二人か)

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あきゅろす。
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