鬼ごっこ閉 場末のチンピラ。大方、あの組織のパシリだろう。 ちらっと撃ってきた禿頭の方の獲物を見たが、軽く泣きたくなった。その銃器の名前は9ミリ機関けん銃。なんで日本の自衛隊の武器で命狙われるんだよ! 「止まれー!」 (誰が止まるかライトヘッド!) ちなみに『軽い』と『光』をかけてある。 ともかく、さっきから銃声が聞こえるが、私には一発も当たらない。散弾なら一粒ぐらい当たっただろうに。 あの銃は機関銃じゃない。機関けん銃だ。ここ、大切。けん銃ですけん銃。決してサブマシンガンではありません。 平和を守るために力が必要なのに『過度な武器はいりません』と平和主義を唱える馬鹿がいるために考えた苦肉の策で作だ まず、全てが駄目だ。 全長が399o、重量は2800g。肩に当て、弾丸の反動を抑える役目をするはずのストックが丸ごとない。フルオートの反動を腕の力だけで支えないといけないから命中率が糞悪い。 ちなみに、こいつの作動方式はオープンボルト式だ。排莢口が常に開いているから機関部が冷えやすく、故障しにくい。けれど、引き金を引くとボルト(撃針を内蔵した重要パーツ)が前進するせいで銃の重心が変化するから、命中率の低さに拍車をかけている。 おまけに曲がりくねった通路を走っているから狙いも定まらない。 故に、当たらない。 つーか、それ捨てて真面目に走った方が正解だぞ? 私もリュック背負っているし。 9ミリ・パラベラム弾がまたばらまかれるが、当たらない。 (次は・・・・・・げっ) 数メートル先に扉。デバイスを見て愕然とする。 (その先が分からない!?) あのアホ!アップデート忘れてんじゃねーか!ここはラビリンス。 扉の先に必ず道があるとは限らない。 スカイ→フォール→ゲームオーバー 最低の方程式が組み上がる。脇に吊っている相棒は抜けない。後ろ向きで二人纏めて当てるなんて確率が低く過ぎる。かといって振り返ってみろ、その隙に体がホーネットホームになっちまう。一か八かだ。 「ずおりゃああああ!!」 肩から扉に突撃。無理やりこじ開ける。 「あれ?」 足裏に感触が無くなる。突如目を貫いた明るさに涙が溢れた。 (うわー、人工太陽の光だ) 視界がぶれる。イコール、落下。 「い〜や〜!!」 ◇ 「がははは馬鹿な奴だ。殺す手間が省けたぜ」 「帰りましょう兄貴。早く連絡しないと俺達の身が」 「そ、そうだな。ふん無駄な時間だったぜ」 ◇ 「・・・・・・っは、生きてる」 運よく鉄骨にリュックが引っ掛かって地面とキスするのは免れた。生きてるって素晴らしい! 「で、どうやって降りんのさ?」 ・・・・・・まったく。 「はあ、逃げ切れただけでオーケーにするか」 ブチッ。 「えっ」 再度落下。 「嘘ー!!」 世の中はとことん上手く出来ているらしい。 [*前へ][次へ#] [戻る] |