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(19)
でもあいつの苗字は阿久津のはず…
何故だ
考えが頭の中をぐるぐる回る
「幸慈さん?」
「あ、あぁ…なんでもない」
遙が鋭い目線を送ってくるが、その視線から逃げるように遙の部屋を後にした
まだ白川との戦闘の爪痕が残る本家を、掃除している來人を呼ぶ
「少し、いいか?」
「はい。すぐ部屋の方に向かいます」
自分の部屋で待っていると、静かに入ってきた
「白川の頭…俺の親友だった」
自分の考えを伝える
來人は吃驚したように、声をあげる
「多分…だが。でも苗字が違うんだ。もともとあいつの両親は、仲が危うかった…離婚したのか…桜鳳会に引き取られたのか…」
「親友ならば……少しは躊躇するかと」
俺だってそう思いたかった
葎は…俺を裏切ったのか?
桜鳳会に引き取られたのならば、少なくとも葎は桜鳳会を恩人だ、と慕うだろう
あいつは優しい奴だ
「俺を、裏切ったのか」
「もう少し様子を見ましょう?遙さんには…」
「いや、あいつにも仕事がある。大変だろう」
言い終わった途端、俺の部屋の襖が開く
そこにいたのは、顔を歪めた遙の姿
「すみません…盗み聞きするつもりはありませんでした。が、俺だって幸慈さん…組長の右手です。大丈夫ですよ」
強くそう言う遙に、甘かったな…と考えを改めた
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