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Underdog





……

やばい、ボーッとしてた。
頭を小さく振って、お偉いさんの話に耳を傾ける。

久しぶりにあの時のことを思い出してしまった。
すっかり封印していたはずの記憶がよみがえったのは、多分左隣りのやつのせいだ。

初対面のときから不機嫌で、今も不機嫌そうに口をヘの字にしているいけ好かないやつ。
前で組んだ指の意外な細さ。
それらが、どこか竜彦を連想させたらしい。



本当にあの日はスバらしかった。
幕が降りた後も、竜彦は俺から目を離さない。
蛇に睨まれたカエルのように動けない俺。
ギターを投げ捨てると、俺の胸倉を掴む。怒りの赴くままに突き飛ばされた。さらに馬乗りになり殴ってこようとするのを、仲間やスタッフが必死に止めた。
服は破け、切り傷や擦り傷で満身創痍になっていく人達を見ながら、俺はぼんやりと座り込んでいた。


ちなみに、竜彦のギターの破片がステージ機材を破壊していたらしく、弁償させられたうえに出入り禁止をくらった。

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あきゅろす。
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