Underdog 5 高校2年から続いていたバンド『クラッドソイル』の崩壊を象徴するように、その黒いギターは木っ端みじんになった。 竜彦の額からはぼたほたと血があふれている。破片でぱっくり切ったらしい。ちょっと怖い。っていうか止めなきゃ。 「何か押さえるもの……」 「話反らしてんじゃねぇよ」 キョロキョロしていた俺に、真剣よろしくギターの柄が突き付けられた。 なんか冷や汗出てきたんだけど……。 「納得いく説明をしてもらおうか」 目を逸らしたら斬られる。 そんな錯覚さえ覚えた。 真っ赤なスポットライトがステージを照らしつづける。 だって、俺だっていろいろ考えたんだ。 CDを出そうって話を持ち掛けてくれる人もいた。 でも、そいつは俺達を見てくれていたわけじゃない。 このままだらだら続けていって先はあるのか。 俺には……見えなかった。 これは所詮遊びなんだ。 真剣な遊び。 いつかは終わりを迎えるものだ。 その「いつか」は、多分今だ。 ごめん、竜彦。 睨み合ったまま、何分が経過しただろうか。 「……以上、クラッドソイルでしたっ」 直哉のやけっぱちな声がして、舞台に幕が引かれた。 明かりが落とされ暗くなる視界の中、肩を落とした竜彦のシルエットがなぜだか胸を締め付けた。 [*前へ][次へ#] [戻る] |