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○Milky baby 〜解〜 [土銀]
女体化話その3です。
苦手な方はご注意。





銀髪の女―銀時―が走り去り、残された土方は沖田の方を向いた。

「総悟 知り合いか?」
「土方さん それ本気で言ってんで?」

沖田が呆れたような顔をする。

「万事屋の旦那じゃねぇですか 分かんなかったんですかィ?」
「万事屋…? …だって…」
「女の姿でしたけど あれ旦那ですぜ まぁ何があっても不思議じゃねぇお人だし」
「……―」


苦い顔で土方が沈黙した。




    +Milky baby〜解〜+




上がった息を抑え階段を昇り、力いっぱい万事屋の扉を開ける。
玄関に倒れこみたいのを我慢して応接間に向かい、ソファに座って一息。

「…はぁ―」

結局そこで寝転んでしまったのだけど。


妙にショック受けて 馬鹿か俺は…
たまたま奴が気づかなかっただけの話じゃねぇか。


そんな風に考えてみながらも洩れるのは溜息ばかり。




暫くそうしていると、

「ただいま〜」
「ただいまヨ〜」

玄関の方から声がした。

「あれ?銀さん帰ってるんですか?」

新八と神楽、二人の足音が近付く。

「何さぼってるアルか〜 コッチ全然猫見つからないヨ」

ぅあ〜 とか言いながら神楽が向かいのソファにスライディングする。

「銀さんの方はどうでした?」
「ん〜? 写真… まだ…」
「…なんか大丈夫ですか?」

新八が俺の顔を覗きこんできた。

「具合悪そうですけど…」
「ん…別に…」
「何?銀ちゃん女の子の日アルか?」
「…アホか」
「神楽ちゃんっっ」

神楽への突っ込みも力が入らず。
多分寝不足と…さっきの事のせいなんだろう。
なんとなく体が重い。

「銀さん今日はここまでにしますか?猫は僕達でもう少し探してみますから」
「…おー」

新八が台所へ向かい、三人分のお茶を用意してきてくれた。
出された湯呑みから上る湯気に、少しほっとする。



一休みすると、二人はまた出掛けると言った。

「銀ちゃん 今日はワタシ新八のトコ泊まるネ」
神楽が寝転んだままの俺を覗きこむ。
「ゆっくり寝てください 体が戻った頃体調崩してたらよくないですから」

俺にそう言うと、神楽と一緒に出ていった。




「…なんか変な気遣わしちまったな」

でもせっかくなので甘える事にして。
タオルケットを引っ張り出して、ソファでごろりと横になる。
気だるさがふわりとした睡魔に変わって…いつの間にか眠っていた。






「ん…」

ころりと寝返りを打って、目を開ける。
向かいのソファ。
ぼんやりした視界に、黒い影。

「あれ…誰…?」

目を擦り良く見ると

「…土方?」
「よぅ」

煙草を噴かす見慣れた姿がそこにあった。
…って あれ?

「…おーぃ 何勝手に入って来てんですかお巡りさん 不法侵入ですか」
「ちゃんとピンポン押したぞ 玄関開いてたし」
「だからって…」


…気まずい。
先刻あったことが脳裏をよぎる。

「しっかり寝入ってたから起こすのもアレかと思ってな」
「…だったら上がり込まねーで帰れよ」
「ホントに女になってんだな 万事屋」
「うるせぇ」

胸がざわざわする。

「確かにちゃんと見りゃあお前だ」
今更…
じっと俺を見てくるのが気に入らなくて
「…さっきは気づかなかったじゃねぇか」
わざとイライラが伝わるように言った。

「…あれは―」
「どーせ」

言い訳しようとする奴を遮る。

「テメェにとっちゃ俺はただの喧嘩相手でその…割り切った関係でしかねぇもんな 姿変わっちまえば気づきゃしねぇよな」
「…違う」
「そんな分かってる事で落ち込む方がバカみてぇだよな」
「違う」
「別に気にしてねぇから 俺もう少し寝るから適当に帰…」
「聞けよ―!」

土方が低く、少し大きな声を出した。

「…俺だって…あの時お前かと思って」
「今更言い訳かよ」
「違う だから」
「男の言い訳は見苦しいぜー」
「だからっ…俺の妄想かと」
「…… は?」
「お前かと思って近寄ったら女で 俺の妄想が重なって違う奴を見間違えたかと…」

思ってもいなかった答えに一瞬呆けてしまう。

「…妄想 って…」
「…この前白い…猫を…」
「猫?」
「…猫見てお前思い出しちまったもんだから その…」
「…お前 今なんかすげぇこと言ってますよ?」
「分かってる…クソっ…」

土方が頭を掻きながら煙草を灰皿に押し付けた。

「…気づかなかったワケじゃねぇんだ」

ゆっくり上げた奴の顔は、柄にもなく赤くなっていた。

「…要するにあれか?土方君 銀さんのこと考え過ぎだって…」
「…あーそーだよ」

そう言ってそっぽを向く。
耳まで赤くしているのを見て思わず吹き出してしまう。

「なんつーか 可愛いトコあんなぁお前」
「うるせぇ」
「まぁ ちゃんと言い訳聞けたからいいや」
「だから言い訳じゃ…」

テーブルに手を付いて身を乗り出して。
そのまま向かいの土方に口づけた。

「ちゃんと俺に気付いてくれたんだろ?」
「…あぁ」
「ならいいや」

少し笑ってやった。

「…笑うと変わらねぇな」
「そりゃあ…まぁ」
「寝顔もな」
「見てたんかスケベ」
「マヌケ顔して寝てたからな」
「やっぱ帰れお前」

ふん とソファに座り直すと、土方が立ち上がりこちらに来た。
「元には…戻るのか?」
そのまま俺の隣に座る。
「多分 暫くすればな」
「だったら心配ねぇか」
「心配したんか?」
「そりゃ…一応」

肩を抱き寄せられ、
「…割り切った関係なんて言うな」
絞り出す様に土方が言う。
あ…そこ気にしたんだ。
「…うん」
素直に頷いといてやるか。



「腹へったな お前この後は?」

結構寝ていたようで、気が付けば窓は夕焼けの色に染まっている。
せっかくだし飯でもと聞くと

「具合悪かったんじゃねぇのか?」
「ん〜 寝たから平気 まだ仕事か?」
「仕事にゃ戻るが…時間なら平気だ」
「なら何か作ってやるよ」
そう言って台所へ向かうと
「手伝う」
一緒に付いてきた。
「何?女の子にゃ優しいん?」
「…お前には だ」

さらっと恥ずかしい事言ってくれやがったけど、気遣ってくれてるってことでいいの か。




じめじめしてたのもどこか行っちまったらしい。
何作ろうかなんて考えながら冷蔵庫を開けた。




……Please wait





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