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○Milky baby 〜悩〜 [土銀]
女体化話その2です。
苦手な方はご注意を。






朝。
目が覚めた。


見慣れた天井。
万事屋のいつもの和室。

「ふぁ〜…」

そして慣れないこのカラダ。




    +Milky baby+ 〜悩〜




「おはようございまーす」

玄関の方から新八の声が聞こえた。
足音が近付いて、押し入れを開ける音がする。

「神楽ちゃん ほら起きて起きて 銀さんもまだ寝て…」

和室の襖を開けた所で新八が固まる。


「おー…おはよ新八…」

体を起こし寝惚けて目をこすっていると、新八が襖の向こうに隠れた。

「はっ 早く顔洗って 着替えて下さいっ」
「へぃへぃ」

何を焦ってんだと思ったら、寝乱れた寝間着の肩が片方落ちた。
細くなった肩とふっくらとした胸が露になる。

「…あー…これか」

昨日いきなり女の体になって、別段気にせずいつもの寝間着を着たわけだけど。
体格の違いで案の定、寝ている内に随分はだけてしまっていた。


とりあえず顔でも洗うか と立ち上がり、ついでに襖の向こうの新八に
「何だよ どーしたん新八〜?」
わざと乱れた格好のまま声をかける。
「べっ 別に何でも…」
そう言う新八の顔が赤い。
「顔赤いぜ〜?風邪か?」
「違います!ってかそんな格好でうろうろしないで下さい」
「ったく チェリーだねぇ新八クン」

ふっふっと笑って洗面所に向かった。





とりあえず着替えを済ませる。
昨日はバタバタしていて、適当にどうにか着物を着ていた。
しかしちゃんと着ると、あちこちサイズが合わない。
幸い背は少し変わったくらいのようだけど肩や、ズボンは腰回りや尻の辺りがどうにも…。
でもいずれ戻るならわざわざ女物の着物を用意するのもなんだし、何より今の坂田家の家計にそんな余裕はない。
ズボンは諦め、インナーの上からいつもの着物を両袖通して着て間に合わせる事にした。



「銀ちゃんオハヨ〜」

身仕度を整えた神楽がテーブルに付いて、ようやく朝飯になった。

「銀ちゃんまだ戻らないアルか」

飯を頬張りながら神楽が聞いてきた。

「みたいだな」
「今は急ぎの依頼も入ってませんけど…どのくらいで戻るんでしょうね」

お茶を啜る新八が言う。
食べ物の効果だからそんなに長い間ではないって店の兄ちゃんは言ってたけど…
他星の物だし、いかんせんよく分からない。

「待つしかねぇんだろうな」
「そうですね」
「でも勿体ないネ この乳戻ってしまうの」

神楽が横から俺の胸を触ってきた。

「神楽ちゃんっ ちょっと…っ」
「まーなぁ…」

慌てる新八を無視して自分の胸元を覗く。
我ながらなかなか見事な谷間。
女共がサプリに群がるのも分かる気がした。

「銀さんも…いつまで見てるんですか」
「いーだろ別に 自分のなんだから」
「そういう問題ですか …つか もう少し前閉めて下さい」
「何だ?気になる?」
そう言ってファスナーを少し下ろすと
「わ ちょ…っ」
新八がわたわたするのが面白くて、ついからかってしまう。


とりあえず、依頼をこなす事にした。

直接依頼人と顔を合わせない―猫探しと浮気調査から。
依頼人と会って混乱させるのも面倒だし、家に居ても無駄な事ばかり考えちまうから。

仕事中は女になったからと別段変わりはなく。
ただ男相手の聞き込みは、いつもより余計に喋ってくれるのでこの姿が案外役に立った。

でもやっぱり知り合いに会うのは気が引けて、なるべく目立たない道を選んでたりした。



「猫見つかったか〜?」
「いえ 浮気調査の方は何か進みました?」
「まぁな あとは証拠写真の一つもあれば…」


夕方、万事屋に帰って来たところで、店の支度中のババァと出くわした。

「おや 三人揃っておかえりかい?」
「お登勢さん こんにちは」

新八が挨拶を返す。


あ… ヤベ…
ババァの視線が俺に止まった。


「…銀時かい?」
「…そう」
「アンタ…貧乏だからって遂に玉売って」
「ねーよ!」

すぐに俺の事分かってくれたのはありがたい…けどそれはねーだろ…


立ち話も何だからと店に入ると、キャサリンとたまが店支度の手を止めこちらを向いた。

「誰デスカ オ登勢サン 上ノ依頼人?」

キャサリンには俺の事は分からなかったらしい。
たまに至ってはデータがエラーを起こしそうになって、やれやれと事の次第を話す事にした。



「まぁ元に戻るなら心配ないじゃないかい」

煙草をふかしながらババァは呑気にそう言う。

「そうは言ってもよ…色々面倒だし」
「別に仕事は出来るんだろ?」
「ん…まぁ」
「だったら大した問題はなさそうじゃないか」

ふっ と煙を吐き出して

「何ならその姿の間ウチでホステスやって 貯まってる家賃の足しにしたらどうだい?」

ババァがそんな提案を出す。

「ダッタラ早ク支度シナ モウスグ店開クヨ」
「やらねぇよ!…ってか勘弁してくれ」

キャサリンに突っ込みを入れ、カウンターに項垂れこんだ。


これ以上ここに居たら何言われるか分かったもんじゃない。
逃げるが勝ちと、さっさと万事屋に引き上げた。









「…ん」

次の朝。
もしかして元に戻ってるかという淡い期待は直ぐに裏切られ。

「はー…」

溜息を吐いて布団から出た。




「おはようございまーす あれ?銀さん珍しいですね」

洗面所を出たところで新八がやって来た。

「…俺だってたまにはちゃんと起きるわ」
「そうですね …元気無いですけどちゃんと寝れましたか?」
心配そうな新八に
「へーきだって 超寝たから」
ひらひらと手だけで返事して。



さすがに三日目ともなるとテンションも下がる。
ホントに戻るのかとか妙に弱気になるし…
体だけでなくメンタル的にも女々しくなってんのか?
昨日も結局のところ浅くしか眠れず、気がつくと朝になっていた。


じめじめするのもアレだし依頼を済ませようと、浮気調査の続きに出かける事にした。
大体調べはついたので新八達には猫探しを任せ、一人でそちらに向かう。

後は証拠写真を撮れれば…裏路地をふらついていると、誰かと肩がぶつかった。

「おっと」
「お 悪ィ」

そのまま行こうとした所を

「悪ィの一言かぇ?姉チャン」

ベタな…
ぶつかった相手の、柄の悪い男が突っ掛かってくる。

「あんだよ?謝ったろが」
「気の強い姉チャンじゃの 木刀まで下げて女侍かぇ?」

男がひひっと下卑た笑い声を上げる。
そして、一緒にいた二人の仲間らしい男達と俺の周りを囲んだ。

「なんじゃ なかなかいい女じゃの お詫びにちょっと付き合えや」
「はぁ?何がお詫びだコノヤロー」

言い返すと、横から肩を掴まれる。

「俺らとイイコトしようや」
「痛い目見たくなけりゃ大人しくしとけ」


痛い目だァ?
じめじめしていた気持ちがイライラに変わる。


「…痛い目見るのはそっちだボケェ」


低く言い放ち、ぱん と肩を掴んでいる手を払う。
そのまま有無を言わさず男達を地べたに這いつくばらせた。


―はずだったのだけど。



「…いっ て このアマぁ!」

普段なら起き上がって来ない程度には殴ったつもりが…そんなに効いてない?

「えぇ度胸してるやん…」

ごきりと肩を鳴らしながら男達が立ち上がる。

「チッ…」

体が女なせいで攻撃力が下がってるらしい。
それでもそこそこダメージはあったようで、こいつらを下手に怒らせちまった。


仕方ねぇ…
木刀に手をかけた時、


「そこォ 何してやがる」

後ろから聞き覚えのある声がした。


「…警察か 運が良かったのォ姉チャン」


捨て台詞までベタに吐き捨てると、男達は去っていった。





「大丈夫か?」

後ろから声をかけた相手がこちらに寄ってきた。
それは真選組の、副長殿。


…土方君にこんなとこで見つかっちまうとは…
何言われるか…とかつい身構える。


「あ まぁ…平気」

土方は俺を見て一瞬目を細めた…けれど。


「そうか この辺は物騒だから気をつけろよ」
「うん…?」


この反応は…もしかして気付いてない?


「土方さーん 何してんですかィ」

そこにもう一人真選組の…沖田君がこちらにやって来た。

「あぁ ちょっとな」

土方が指差した俺を見て、沖田君が
「あり?…もしかして万事…」
そう言いかけた所で
「あっじゃあこれで」

そこから走り出した。





「はぁ っ… はっ」

走りながら、さっきの事を思い返す。



沖田君は俺に気付いたみたいだった。
でも、あいつは…


…別に
土方とはちょっとした知り合いなだけで。
カラダの関係があったって所詮それだけの…

それだけ…


なのにすげぇ苦しいのは何でだ?



じめじめからイライラして、今の頭の中はメチャクチャで。


「はぁ はぁ …っ クソッ…」


そのまま走って、万事屋へ戻ってしまった。





……Please wait





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あきゅろす。
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