「ふっ、リボーンめ、参ったか!」
まだ参るような事はしていないのだが、とりあえず3月14日が来たことに、綱吉はすっかり満足していた。
ちなみに件のリボーンは、ホワイトデーが来ても参るどころか高笑いしながら綱吉をからかう人物ではある。今日のこの日が綱吉に味方する訳はなかった。
さかのぼること一ヶ月前、世に言うバレンタインデー。今考えると血迷ったとしか考えられないが、綱吉はリボーンにチョコレート(しかも手作り)を最終的にあげた事になったのだ。
しかもリボーンがチョコを食べて一言。
「ダメツナのチョコを食べた俺様は、ホワイトデーもプレゼントを要求する権利がある」
そして今に至る。
最近まで、バレンタインデーのあの日あの時あの場所で、一応チョコレートを渡したのだから何か俺達に進展があるのかな、と綱吉は胸をときめかせた。だが、悲しい程に今まで通り。素っ気ない、かと思えば妙にからかってくる。
この日がくるまでそんな調子だったから、「あれ、これリボーン忘れたんじゃ?」と淡く期待していたのだが、昨日の放課後に「ホワイトデー楽しみにしてるゾ☆」なんてメールがきた。
だが、綱吉はこうも考えた。
そもそも、ホワイトデーなんて、何をあげればいいんだよ、と。
元来、バレンタインデーと縁のない生活をしていた。母から貰いはするが、改まってお礼のプレゼントなんてしたことはない。それに、リボーンからバレンタインに何か貰った訳ではない。むしろ、あげた方なのだ。
リボーンの口ぶりや態度、そして長年の勘から考えると、無難なハンカチ等は許されないだろう。バレンタインに手作りチョコレートだったのだから、今回も綱吉をからかう為に手作りを望んでいる筈だ。
だが、綱吉は秘策があった。
ホワイトデー、男子ならばマシュマロだろうという説を知っているからだ。
そのほかにもキャンディー説、キャラメル説など多様なのだが、綱吉は知らなかった。
ということで、市販のマシュマロ(ファミリーパック)を鞄に入れた綱吉は、登校から勝ち誇った気持ちでいっぱいだった。
リボーンが一番重要視するであろう手作りをあえてしないという選択により、気が高ぶっているのだ。
だが、いっそ無視すれば良かったのに、そんな微妙な反抗をしてまでプレゼントを用意した綱吉は、結局リボーンが呆れて止まない気の弱いダメツナそのものであった。
マシュマロ数値