外気に触れて、自分の身体がいっそう敏感になる。こんな身体を、彼女に触れられるのか。鳥肌が立っている私の身体を、ツナはどう思うだろう。身体が硬くなる。やっぱり嫌だと口を開こうとした瞬間、温かいものが胸を触り、全身が総毛立った。
「!」
「うわぁ、やわらかぁい…!」
体温高いね、リボーン。そう言ってはじゃぐ彼女の声に生返事をする。
これは、擬似セックスだ。
わかってしまった。
無意識に、肌が重なっている。
吐き気が起こる気がした。
なんて渇いた行為なんだろう。
引き返さなければ。今すぐに。
「…ねぇ、やっぱりちょっと、寒い」
固く聞こえないように。ツナが申し訳なく思わないように。
こんなときでも、そんな風に気をつけてしまう。だって私にとってツナは特別だから。そしてツナにとっては私は単なる友達でしかない。
「あ、ごめん。わかった、もういいよ」
シュンとしたツナの声。でも、私は励ます言葉が見つからない。いかにさりげなく服を着るかに注意をしていた。
どれだけ小さな動きでブラジャーを着けられるかに神経を研ぎ澄ました。パジャマのボタンを閉めると、感じた以上にに上半身裸が冷えていたのだとわかった。
「…もう寝よう?」
ツナに背を向けて呟く。そういえばツナは私が服を着る動作の時、どうしていたのだろうか。見ていかもしれない、のを、同性なのに気にするのは可笑しいのだろうか。
少し考えていると、背中の布が軽く引っ張られた。たぶんツナが引っ張ったんだろう。私は振り向かずに囁いた。
「…何…?」
「……怒ってる?」
ツナの細い声は本当に小さくて、たぶん夜じゃなかったら消えていたかもしれないくらいだった。
「…怒ってない」
「ほんと?」
「ほんと」
怒ってなんていない。ただ、堪らなく怖くなった。自分達が、自覚なしにしていた行為が、どんな意味を持っているのか気付いてしまって。
友達の一線を、何の気無しに越えようとしていたのが、とても気持ち悪かった。
ツナは好きだ。たぶん恋愛も少し混ざっていると思う。でも、それでもツナは私の中では綺麗で無邪気な存在だった。それを自分を使って汚そうとしていた。嫌だった。
「…ならいいや。おやすみ」
ゴソゴソと音がして、温もりが離れていくのを感じた。たぶん、ベッドの端にいったんだろう。
さっきはあんなに近かったのに、今はこんなにも遠い。
でもしょうがない。神聖なものは、近づきすぎてはいけないのだ。守る資格も与えられていないような私に、ツナは毒みたいになっていた。
もしかしたら、私はツナをどうにかしてしまうかもしれない。
自分の中の独占欲だとか嫉妬が、ツナを傷つけたり汚したりしてしまう。それが、凄く怖い。
これでいい。さっきまで、世界に私達二人だけみたいだった。そんな時間があった、それだけで十分だ。
初恋なんて、こんなにも儚い。そして消えにくい。
聖域
貴方は私の、かけがえない綺麗なもの
常識人なリボーン♀さん。
中学生って、こんな時ありませんか…?
こういう、危うい友情が好きです。
ツナの家にお泊り中です。