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離したくはない




「…キモいだろ?」


何も言ってくれない大和に泣きそうになりながらも、出来るだけ明るく振舞って顔を上げると、大和は真剣な表情のままこちらを見つめていた。
ああ…ちゃんと聞いててくれたんだな。


「忘れろ、そんな奴」
「えっ…」


その時だった。
大和が近付いてきてグイッと腕を引っ張られ、俺は温かいものに包まれる。大和に抱きしめられていた。

ふわり、と鼻をかすめる香水の匂い。

どうして…どういうこと。
戸惑いで涙が込み上げてくる。


「ごめんな、宮田。嫌なこと話させちゃったな」
「…やま、と」
「本当ごめん。宮田がそんな重いの抱えてるとは思わなかった」


大和は困惑する俺に優しい声で話しかける。
時折、背中や頭を優しく撫でられ、不安な気持ちが洗い流されていく気分だった。


「俺が引くとでも思ったか、バカ」
「だって…男と付き合ってたとか」
「それは想定外だったけど…お前と離れる気なんて、ねぇからな!」
「な、んだ、ソレ…ッ」


俺の気持ちを代弁してくれる大和に遂に涙が零れた。
やっぱり大和は他の奴とは違う。
そんな事で手のひらを反すような、そんな奴じゃなかった。

良かった、本当に嬉しいよ。


「泣き虫」
「…うるさい。マジ嫌われると思って」
「バカだねえ、宮田チャンは」


大和と出会えて良かった。


「(…って、俺今どこに居る?)」


しんみり頭を肩に預けたところで、重大なことに気付く。俺は今誰の腕の中に居るのだ、と。


「わ、悪りぃ!」
「え、ああ…別にいいけど。つーか、俺がしたんだけどな」


バッと勢いよく大和から離れて距離を取ると、大和は目をパチパチさせて驚いていた。
いくら引かないとはいえ、男と付き合っていた過去を暴露してしまったのだ。嫌悪感を抱いてもおかしくない。


「(大和はちゃんと俺を友達だって思ってくれてるんだな)」


さっきから空回りしている気分。

少し照れくさくて、机に置きっぱなしにしていた酒に手を伸ばし、誤魔化すように喉を潤した。
顔が赤いのは酒のせいなのだ、と主張するかのように。




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あきゅろす。
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