離したくはない 4 「…キモいだろ?」 何も言ってくれない大和に泣きそうになりながらも、出来るだけ明るく振舞って顔を上げると、大和は真剣な表情のままこちらを見つめていた。 ああ…ちゃんと聞いててくれたんだな。 「忘れろ、そんな奴」 「えっ…」 その時だった。 大和が近付いてきてグイッと腕を引っ張られ、俺は温かいものに包まれる。大和に抱きしめられていた。 ふわり、と鼻をかすめる香水の匂い。 どうして…どういうこと。 戸惑いで涙が込み上げてくる。 「ごめんな、宮田。嫌なこと話させちゃったな」 「…やま、と」 「本当ごめん。宮田がそんな重いの抱えてるとは思わなかった」 大和は困惑する俺に優しい声で話しかける。 時折、背中や頭を優しく撫でられ、不安な気持ちが洗い流されていく気分だった。 「俺が引くとでも思ったか、バカ」 「だって…男と付き合ってたとか」 「それは想定外だったけど…お前と離れる気なんて、ねぇからな!」 「な、んだ、ソレ…ッ」 俺の気持ちを代弁してくれる大和に遂に涙が零れた。 やっぱり大和は他の奴とは違う。 そんな事で手のひらを反すような、そんな奴じゃなかった。 良かった、本当に嬉しいよ。 「泣き虫」 「…うるさい。マジ嫌われると思って」 「バカだねえ、宮田チャンは」 大和と出会えて良かった。 「(…って、俺今どこに居る?)」 しんみり頭を肩に預けたところで、重大なことに気付く。俺は今誰の腕の中に居るのだ、と。 「わ、悪りぃ!」 「え、ああ…別にいいけど。つーか、俺がしたんだけどな」 バッと勢いよく大和から離れて距離を取ると、大和は目をパチパチさせて驚いていた。 いくら引かないとはいえ、男と付き合っていた過去を暴露してしまったのだ。嫌悪感を抱いてもおかしくない。 「(大和はちゃんと俺を友達だって思ってくれてるんだな)」 さっきから空回りしている気分。 少し照れくさくて、机に置きっぱなしにしていた酒に手を伸ばし、誤魔化すように喉を潤した。 顔が赤いのは酒のせいなのだ、と主張するかのように。 [*前へ] [戻る] |