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離したくはない



さすがにユウヤのことは黙っておこう、と酒に手を伸ばすと眉間にシワを寄せた大和と目が合った。


「1年前居たんじゃねーの?」
「…ッ」


やばい…、ついうっかり以前に口を滑らせていたことを忘れていた。
普段、人の話を聞かないくせに、こういうドウデモイイことだけは覚えているんだから。


「あー…、それもすぐ別れて」
「じゃあ、セックスは?」
「してないしてない!」
「…嘘つき」


ジトっ、とした目で見られて間違いに気づく。
「1年ヤッてない」というニュアンスで話した気がする。
…ハメられた。こいつ、検事とかに向いてんじゃねぇのか。


「や、大和は?どうなんだよ、何人ぐらい…?」
「30くらい。で、何で別れたの?」


少し誤魔化そうと大和に話を振るも、すぐに戻されてしまう。俺も一夜限りとかの嘘を付けたら良いのだが、性格上どうやらとっさの嘘は苦手らしい。


「えっと…浮気されて」
「ふーん。誰?」
「いや、言っても知らねーだろ」


今日の大和は、いつもに比べてやけに突っかかってくるから、酔っ払っているのかもしれない。

タジタジになりながら苦笑していると、大和があの表情をした。
必殺「子犬ちゃん作戦」(夏樹命名)。


「友達なんだから教えてくれたっていいじゃーん」


前にも言ったように俺はこの表情に弱い。
だけど、今日はそれに流されたくない。

俺はお前が大切な友達だから…言いたくない。


「ごめん。…思い出したくもないっつーか」
「……」


話して大和と友達で居られなくなったら、嫌だ。
軽蔑など、されたくない。


「…今でも好きなの?」


顔を背けていると、大和から聞かれた。

その声は普段よりも真剣みが帯びていて、思わず身体がビクッと強張ってしまう。
顔を上げれば鋭いその目に否定しようにも、嘘が通用しないような気がした。


「…好き、だと思う」


俺は、こう答えていた。

これが、やっぱり俺の正直な気持ち。
まだ…ユウヤのことが忘れられていないんだな。




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