離したくはない 2 さすがにユウヤのことは黙っておこう、と酒に手を伸ばすと眉間にシワを寄せた大和と目が合った。 「1年前居たんじゃねーの?」 「…ッ」 やばい…、ついうっかり以前に口を滑らせていたことを忘れていた。 普段、人の話を聞かないくせに、こういうドウデモイイことだけは覚えているんだから。 「あー…、それもすぐ別れて」 「じゃあ、セックスは?」 「してないしてない!」 「…嘘つき」 ジトっ、とした目で見られて間違いに気づく。 「1年ヤッてない」というニュアンスで話した気がする。 …ハメられた。こいつ、検事とかに向いてんじゃねぇのか。 「や、大和は?どうなんだよ、何人ぐらい…?」 「30くらい。で、何で別れたの?」 少し誤魔化そうと大和に話を振るも、すぐに戻されてしまう。俺も一夜限りとかの嘘を付けたら良いのだが、性格上どうやらとっさの嘘は苦手らしい。 「えっと…浮気されて」 「ふーん。誰?」 「いや、言っても知らねーだろ」 今日の大和は、いつもに比べてやけに突っかかってくるから、酔っ払っているのかもしれない。 タジタジになりながら苦笑していると、大和があの表情をした。 必殺「子犬ちゃん作戦」(夏樹命名)。 「友達なんだから教えてくれたっていいじゃーん」 前にも言ったように俺はこの表情に弱い。 だけど、今日はそれに流されたくない。 俺はお前が大切な友達だから…言いたくない。 「ごめん。…思い出したくもないっつーか」 「……」 話して大和と友達で居られなくなったら、嫌だ。 軽蔑など、されたくない。 「…今でも好きなの?」 顔を背けていると、大和から聞かれた。 その声は普段よりも真剣みが帯びていて、思わず身体がビクッと強張ってしまう。 顔を上げれば鋭いその目に否定しようにも、嘘が通用しないような気がした。 「…好き、だと思う」 俺は、こう答えていた。 これが、やっぱり俺の正直な気持ち。 まだ…ユウヤのことが忘れられていないんだな。 [*前へ][次へ#] [戻る] |