その他 嵐の前の、嵐の後の。 [アリ龍] 「うああああああ!」 ザガンの言葉を受け、突然泣き出した白龍に、目の前にいたアリババ、アラジン、モルジアナは、ただただ驚くばかりだった。 「おおお落ち着け白龍!あいつの言ってることなんか気にすん…」 「うるさいちゃらんぽらん!」 「白龍おにいさん、落ち着いてよ!僕たちはあんなこと思ってないか…」 「お前も黙れチビすけ!」 「白龍さん、八つ当たりもいい加減に…」 「お前もだ怪力女! みんなどうせ同じこと思って…うあああああああ!」 再び踞り、嗚咽を洩らす白龍を、戸惑いの目で見つめる。 ザガンも驚いていたようで、悪口どころか物音もしない始末である。 とにかく、泣き止んでもらわないと話どころか先へも進めない。 そう思ったアリババは、未だ地面と顔を合わせている白龍の側へ座り、優しく声を掛け続ける。 「なぁ白龍。俺たちは、お前の過去のことなんて知らないし、俺たちから知ろうとはしない。 だから、なに言われても気にすんなよ。お前は充分頑張ってる。」 「…るさいっ!なんでお前なんかが強いんだよ…くそ…っ。 国を投げ出してシンドリアで遊んでるようなやつが…なんで…っ」 かちん、と。 目には見えないが、確かに"何か"が音をたてた。 それは、自身の自尊心や怒りからのものではなく。 (…何がお前を、そんなにまで変えたんだよ…白龍。) 泣き続ける白龍の頭を静かに撫でながら考えたことは、侮辱されたことについてではなく、そう言うことしか出来なかった彼の境遇についてだった。 …まだ、何かを抱えているはずだ。 少しでも吐き出させてやれは、楽になるのだろうか。 「アラジン、モルジアナ。悪いけど、少し外してくれるか? こいつと話がしたい。」 呆然としていたところに声を掛けられた二人は、不満げな表情をしたが、 アリババの意図を汲み取ると、静かに立ち去り、その場には王子と皇子だけが残った。 「…白龍。今は俺しかいないから、言いたいことあったら全部吐いちまえ。楽になるから。」 小刻みに震え続ける肩を叩くと、素早く振り払われ、それと同時に視線も合う。 「…な、で…俺なんか構うんだよ…! 散々悪口言われて…悔しくないのかよ…っ。何で、そんな…俺に声、かけ…っ…」 「…白龍。」 詰まりながら訴えるものに、何か…怒りとは違う何かが、体の奥から滲み出てきて。 「…っ…な、にを…っ」 「…大丈夫だから。」 気づいたら、体が動いていて。 座り込んでいる白龍の正面から、その華奢な体を包み込むようにして、抱き締めていた。 突然のことに、抵抗もなにも出来なかった白龍の言葉を遮るようにして放った言葉は、間違いなく本心で。 「…なぁ白龍。お前が何を抱え込んでんのか知らねぇけどさ。 少なくとも、今ここにいる間だけは、俺が全部受け止めてやるから。」 背中を、一定のリズムで叩いてやりながら。 いつにも増して優しい声で、続く言葉を必死に探す。 「だから…その、えと…。 …お前はよくやってくれてる。本当にありがとな。」 「…っう…ふ…っ…うぅぅ…」 声を堪えるようにして、再び泣き始める白龍。 その顔は、アリババの肩口に埋まっており、一方のアリババも、白龍の頭を撫でながら、自然に落ち着くのを待つ。 その姿はまるで… 「おーい、アリ…」 (しーっ!) しばらく前に去っていった方から、アラジンとモルジアナが帰ってきた。 そんな二人を迎える側のアリババは、何故か人差し指を唇に当てる仕草で。 「です白龍さん、落ち着いたんですね。」 「あぁ。」 二人が覗き混む目線の先には、アリババに抱きついた格好のまま、規則正しい呼吸を続ける白龍。 「よっぽど安心したんだねぇ。」 「本当にな(汗) しばらく、このままそっとしといてやってくれねぇか?」 うっすらと残る涙の跡を拭ってやりながら、長々と外してもらった二人に対して懇願すると。 「そうだね、そうしようか!僕たちも、ゆっくりしたいしね、モルさん?」 「急ぐ道でもありませんし、構いません。」 「…ありがとう。」 愛しげに、腕のなかの皇子を見つめる。 そんな姿を見たアラジンは、モルジアナの方へ向けてぽつりと問い掛ける。 「何か…兄弟みたいじゃないかい、アリババくんと白龍おにいさん。」 「そうですね。もしかしたら、それ以上の…」 ちらりと、目線をもとに戻す。 そこには、相変わらず愛しげに白龍を見つめるアリババの姿があり。 (…あんな表情のアリババくん、初めて見たよ。) 暫く後に迫る、避けられない戦い。 …今だけは、四人に束の間の休息を。 初マギ!難しい! 昨日の白龍ショック(←青浪命名)に触発されて書きましたごめんなさい! 白龍大好きおうじコンビ最高! [*前へ][次へ#] |