夏ホラーレビュー
秋山京介「狂おしき夏の日」
壊れてく、狂っていく、失っていく。
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日常が壊れると人はどうして狼狽してしまうのだろう。いついかなる時だって最悪の状態というのはすぐ隣に用意されていて遮るものはなにひとつない。新聞に、テレビに、ラジオに、世間話に、非日常は大々的に紹介され、無意識に準備が出来ているはずなのに。それなのに一度壊れてしまうと、人は平常心ではいられない。
物語の主人公である圭一は、ごく普通の社会人で、妹がいた。変わった部分と言えば幽霊が少し見えるくらいのもので、彼はいたって身の丈にあった現実を楽しんでいた。
だがいつものように出張から帰ると、家は何故か彼の許可なく葬儀をとり行っていた。額縁には可愛い妹の顔。現実が壊れた瞬間、主人公の日常は狂ってしまった。
作者である秋山さんは、主人公に事件の跡を追わせる。少しずつずれていく現実を丁寧に描きながら、謎が解けていく。その先に待ち受けるのは、日常から逸脱した、だが世界のどこかでいつも用意されている非日常だ。
それが怖い。
日常が壊れることは確実にホラーなのだと、「狂おしき夏の日」は語る。
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