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小夜嵐
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 人間、後悔にまみれた生を生きるしかないのだと言った奴に、オレはこの時ばかりは全力で同意したいと思った。




 売り言葉に買い言葉。
 自分で自分の幼さに嫌気がさすくらいには大人だったのかも知れないが、自分の行動を制御仕切れずに感情のまま暴言を吐き、あいつを傷つけたことに関しては、どこまでも子供だと思う。

 先ほど些細なことで頭にきて、物の弾みで言ってしまった、『お前なんか好きじゃねえんだよ』。じゃあ何だよ、と言われると、それは分からない。
 でもあいつは間違いなく、『お前なんか嫌いだ』。そうとったに違いない。
 顔を真っ赤にさせて、目には涙を浮かべて、下を向いて唇を噛み締めて。握り込んだ手は、真っ白だったことを鮮明に覚えている。

 しまった、と思った時には、もう踵を返して走り去るところだった。
 泣かせてしまった、という罪悪感が足をすくませて、結局追い掛けるどころか呼び止めることすら出来ずに、とっさに伸ばした手は空を切る。
 やり場のない手に自然と力が込もって──苛立ち紛れなのだろうか──自分の太股を、思いきり、拳骨で殴った。









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