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小夜嵐
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 店の中は閑散としていた。
 ランチタイムの忙殺されそうな忙しさも、過ぎてしまえば嘘のように宿は静かになる。
 静まりかえる…という表現を避けたいのは、店主としての最後の抵抗なのだろうか。

「よう、坊主」

 ぼんやり焦点の合わない目で食堂を見つめていたオレは、扉がきしむ音で我に返る。

「…何だ、駐在さんか」
「何だとはご挨拶だな。心配して来てるのに」

 人の良さそうなおじさん──それを本人に言ったら『まだおじさんと呼ばれるような年齢じゃない!』と怒られたが──は、よく忘れじの面影亭の付近をパトロールしてくれている。
 昼飯時を少し外してやって来るこの人は、店の売り上げにも貢献してくれる有難い常連客でもあった。

「悪い。コーヒー飲む?」
「いや、ちょっと注意喚起に顔出しただけだ。すぐに帰るよ」

 おじさん──もとい、駐在さんは、ポケットからくしゃくしゃの紙切れを出して、オレに差し出す。
 少し温まっているその紙を広げて、記されている文字を読み上げた。

「なになに……“不審人物の目撃情報が相次いでいます。近隣の住民の皆様は、不審な人を見掛けたら、是非ご一報下さい”?」
「そう言うこった」



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あきゅろす。
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