いってらっしゃい、
“いってらっしゃい”
てっきりあたしが先にこの町を出ることになるだろうと思ってたのに
あたしが先に、ライを見送ってこんな台詞を言うなんて。
「忘れ物はないのか?」
「ああ、昨日ばっちり確認したから」
「ライさん、お体には気を付けて頑張って下さいね」
「ポムニットさんも、面倒かけてごめん。お店、よろしくな」
「お任せ下さいまし!」
──何だか背中しか見えないのが、ライがすごく遠くに行っちゃったみたいで。
気を付けて、
頑張ってね、
無理しないでよ、
結局どの言葉も喉の奥で空回って、出て来やしない。
見送るのがこんなにツラいなんて、思ったことなかった。
「じゃ、そろそろ行くな」
行っちゃう。
──もう帰って来ないなんてことは、ないよね…?
あんたの家は、ここなんだからね……?
「いってらっしゃい、お土産、忘れないでよ!」
突き上げる不安の代わりに口から出た言葉。
……なんて可愛いげのない!
「分かってるよ。
必ず料理の腕を上げて、お前に一番に食べさせてやるからな!」
そんなあたしの気持ちを見透かすような、あんたの笑顔にちょっと安心したなんて、
絶対言ってあげないけれど!
お題:xxx-title様
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