オトンとオカンと
従者達は考える
鵺子の部屋で若干複雑な心理戦が行われている事を余所に。
大学に行った現世で幼なじみ、戦国従者組がなんとか昼休みを迎えていた。
◇◇◇◇◇
学内の食堂で。
佐助と小十郎が同じテーブルで向かい合い、神妙な顔つきで会議していた。
ちなみに今日の昼食はオトンとオカンの合同手作りお弁当なので、溢れ出す女子力に通りすがりの生徒がギョッとして行く。
そんな事は気にも留めずに、二人は会話を進めた。
「…あのさ、右目の旦那…」
「……言うな、」
重い空気に、不思議と周りの生徒が口を噤んだ。
佐助が肩をすくめて眉をひそめる。
「や、混乱してるのは分かるけどさー…。
落ち着いて考えてみなよ。
うん、一夜で旦那達がでっかくなっちゃったのには俺様ビックリだわ。
でも…、って眉間の皺おかしくなってるよ!?深っ!箸とか挟めそ…」
「地獄の門の開き方…知りてえのか?」
「…っ、はははハハ…やだなー…ただの冗談っしょ…」
小十郎の地を這うような声に箸を片手に立ち上がっていた佐助が、冷や汗をかいて座り直した。
周りからはいつの間にか生徒が退いているため、彼らの異様さが引き立っていた。
「……猿飛、おかしいとは思わねぇのか?」
「いや、可笑しくは……っ嘘嘘!分かってるよ旦那ァっ!そんな睨まないでよ、今更じゃない?こんな状況、おかしいに決まってる…」
タイムパラドックスだの、そんな小難しい話をするつもりはまったくないのだが。彼らが此処に来る理由は一体なんなのか。
「ま、何でも理由ありきだなんて思わないのが吉かもなー…」
「…だが、それは納得が行かねえ。気付いてるか?政宗様のお歳を考えると、徳川や石田の年齢と辻褄が合わねぇ…」
「や、それは本当に今更な話題だわ。それがバサr」
佐助が言い終わる前に、小十郎の視線が飛んできて言葉は萎んでしまった。
「でも、今までと同じでいいんじゃないの?多分、急にまた成長するか元の時代に帰るんだから、さっ」
パチン、と音をたてて。
両手を合わせた佐助は弁当箱を片付けてしまう。
向かい側の小十郎は、静かに手を合わせて目を伏せた。
「……この世に、残れば…」
そう呟いた、小十郎の目の前に。
ドッ、と箸が突き刺さった。振り下ろしたのは、無表情の佐助で微かな殺気を放っている。
目を眇めるようにして、小十郎はそれを見つめた。
「……気持ちは分かるよ。俺様だって、みすみす旦那が死ぬような戦国に帰したくはない、
けど、それは傲慢だろ?そういう天命だって、分かってるだろうがっ!!」
「……猿飛…」
怒りと、憤りと、悔しさが滲む佐助の声が最早誰もいなくなった食堂に響き渡った。
(…箸が机に刺さったままだが……ま、いいか)
そんな事を頭の端で考える小十郎だった。
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