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オトンとオカンと
上手くはいかない

場所はまた戻って、鵺子の部屋。言わずもがな昼食タイムである。


彼女は最初、張り切って昼食を用意しようとして
(彼女の料理は、命の落とさない程度の破壊力を持つので)
チビっ子達に全力で止められた。


それはもう、


戦のようであったらしい。



幸い、小十郎達が作り置きして行ったオカズを電子レンジで温めて、それを食す事になったのだが……


「いらぬ」

「たべなさい」


再び、戦いが勃発した。


◇◇◇◇◇


理由は至極単純明快。

佐吉が物を食わない。
それだけ。

「それだから、佐吉は細いまんまなんですよ…っ!
人参!
ピーマン!
茄子!
トマト!

流石、小十郎……私すら苦手な野菜類をうまくナポリタンにまとめている……!」

途中から、幼なじみの女子力の高い料理に嫉妬するように爪を噛んでいた鵺子だったが、梵天丸が「佐吉の話だろ」と言うので話は本筋に戻って来た。
そう、佐吉は食べない。


他のチビっ子達は、箸を使ってナポリタンを食べるという邪道を行った訳だが、食べないよりはマシである。


鵺子の内心は、焦りに支配されていた。


「佐吉、食べない理由は…」

「……関係ない」


ぷい、と顔を背ける佐吉。
顔色は決して良いわけではないし、時間的にお腹が空く頃なのだ。なのに、

「頼みます、佐吉…」


「………何度も言わせるな」

苛ついたように、目を細める佐吉を見つめる鵺子。その間に入ったのは、意外にも竹千代だった。

「待て、鵺子!佐吉も止さないか!理由は言わねば分からないし、何より、彼女や食事を否定するのはおかしいだろう!?」

「……、」


ぴくり、と佐吉の額に青筋が浮かび上がったのだが。竹千代は気にしないで話続けていく。


「いったい、どんな理由が……」



「……私は何もしていない……!」

竹千代の言葉に反発するように、佐吉が叫んだ。

「私は、のうのうと座っていただけだ!なのになぜ、飯が食える!?」

「佐吉、」


「私に分かるように説明しろ、貴様らは何故平気な顔で居られる!?
…卑しい身分の、私には理解出来ぬ知れないがな…」

くっ、と笑った佐吉の顔が今にも泣き出しそうで。とっさに頭を抱き込んで「すみません」と謝った。

「佐吉、佐吉、すみません……あなたが彼らと違うと気付けなくて、あなたがこの世界にまだ慣れていない事も、忘れてしまって…」

彼らは、聡いから。


まるで、気にしていないように振る舞われれば。私には分からない。

けれど、彼らは同じくらいに脆いから。


ふと、張り詰めた糸がほどけてしまう時がある。



「……分からない、」

「佐吉」


「私は、何故ここに居る…?羽柴様、私は、羽柴様の為に…」


「佐吉、すみません」


ただ、謝る事しか出来ない私を責めるわけでもなく。
佐吉は唇を噛み締めて、泣くのをこらえようとするから。


私は、また罪悪感に浸るのだった。



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