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ある夜の秘恋の噺
銭湯行こうぜ

今日は疲れた。
走ったり喋ったりツッコミ入れたり…それと人生において、こんなにチュパカブラなんて言ったり聞いたりした日はなかったろう。これからもない。

そう、とにかく疲れたのだ。


***

「これは銭湯行くしかないな…!」

「…戦闘?…カグヤ様が望むなら…頑張る」



「郭哉?辰壬の誤解解いてから行くんだぞ?」

竜友は家の狭っくるしい風呂で満足なのか、既に湯浴みを済ませて修学旅行で俺が買ってきたテーマパークのキャラTシャツを着ている。
美形にキャラTは混ぜていけない危険物だと知った。混ぜるなキケン!


実の所、辰壬さんがずっと俺に負ぶさるようにくっついていて疲れた。この人体はデカいのに、行動はヒヨコみたいだ。
しかも、一般常識にかける。

「銭湯は言わばデカい風呂です」

「……風呂」


急に嫌そうな顔をして、辰壬さんは首に巻いた布に首を竦めた。口元は見えないが、おそらくはへの字にでもなっているハズ。


「……外で、待つ」

「風呂、嫌いですか」



「……イヤ」

絶対について来ると思っていたのに、嫌がられるとなんだか…

「入りましょう、辰壬さん」


「嫌、だっ」



子供のように、首を振る辰壬さんはやっと俺から体を離した。からかい足りなくて、なんとなく。

俺は、辰壬さんの首の布に手を伸ばした。



「触る、なっ!」


ばしん、と弾かれた手には。結構深い爪の後が出来ていた。

辰壬さんも、俺も。お互いに「やばい」と顔を引きつらせた。


「……辰壬、後で仕置きだ。郭哉は手当てするから、こちらへ」

竜友の冷静さに、逆に気が動転したのか。
辰壬さんは窓から、裸足のまま逃げ出してしまった。


どうやら、今日はつくづく厄日らしいな。
じくじくと、痛み出した傷跡はまるで獣に襲われたようだった。



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