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ある夜の秘恋の噺


「まぁ結論から言わせて頂くと、どんな事してでも『社家』に来ていただく他ないんですよ」

「その割に、交渉するんですね」


「もちろんですよ、カグヤ姫?僕らだってあなたに望んで来て欲しいんだから」


***

そう言って、千晶さんは立ち上がってしまった。

「まだ、時間は有りますから」

そう言った表情は、なんだか苦しげだったと思う。何故ならその苦しそうな顔は一瞬で胡散臭い笑みになってしまったから。

「願わくば、あなたから僕らを望んで欲しいものです」


「あのね、カグヤ様…此処に残る、よ」


辰壬さんは、たどたどしくも嬉しそうに頭をすり寄せてきた。しかし、一緒に来た千晶さんと茶を片していた竜友は唖然として、


ちょっと、沈黙。



「いや、ちょ、何言ってんの辰壬くん?君は帰るんだよ一旦!またこれば良いからね?」


「ヤダ」


ギュッと俺を抱き締めて、つうかしがみついて辰壬さんはジト目で千晶さんを睨みつける。

「千晶キライ」

「僕だって辰壬くん好きな訳じゃないんだからね、バカっ!もう知らないっ!」


泣き真似をして、千晶さんは玄関へと走る。え、あの…このデカい人置いてかないで!最後まで面倒みて!

俺の必死な心の声が通じたか否か、千晶さんはちらっと振り向いた。今だ、カグヤ姫の眼力的な何かで千晶さんを呼び戻すんだ俺!


「じゃあ、カグヤ姫〜その人の事お願いしますね。また大学の合間に来ますから」

「え、大学生」


パタンと、扉はしまった。



あの腹黒眼鏡覚えておくがいい…。次会ったら眼鏡取り上げて受け属性にしてやる…。


と、郭哉は思ったとか思わなかったとか。

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