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ある夜の秘恋の噺
消えて行く月曜日


郭哉が寝て居る間に、各陣営が睨みを聞かせたり、偏った性癖を暴露したりと濃い休日を経て。

月曜日。


当たり前のように、郭哉は起きて竜友の朝食を食べて、桃耶が迎えに来るのを待っていた。
待っていたのだが。

「…竜友、今何時?」

「もうとっくに出てるかと思ってたぞ、不登校か?母さん心配」

「そんなゴツイ母さんは要らない、竜友は出来るお手伝いさんだ、文句無いだろ」

「あぁ、満足!」


「カグヤ、オレは?」

「辰壬さんは、抱き枕かな…」

相変わらず、夜中にはぎゅうぎゅうとくっついてくる、彼はちゃんと寝れているのだろうか。俺は寝れていない。

「授業中寝ちゃうかもなぁ」

「冗談はともかく、一時間目始まるんじゃないのか?早く行け」

竜友に急かされながら、郭哉は家を出た。
いつもなら、世話焼きな幼なじみが隣にいる通学路を一人で歩くのは変な気分だ。

ひどく、遠く感じる。

「桃耶、どうしたんだろう」

校門には誰もいない。
時計は、ホームルームの時間をさしている。

遅刻かな。
判定基準がよく分からないので、とりあえず教室に向かう事にした。

郭哉は気付かなかったが、足は自然と早足になっていた。

ちらりと教室をみれば、いつもの風景にホッとしながらも別の意味で緊張してくる。
扉の前で深呼吸してみると、中から級長の声が聞こえた。

「以上、27名!欠席者は居ません!」





扉に掛けた手が、力なく落ちた。

息が詰まる。


「……は、」

いや、待て待て。
もしかして桃耶が代返したかもしれないじゃないか、級長がうっかりしてただけじゃないか、だから、

だから、まだ。


「お、おはようございます」

声が震えた。
俺の登場に、教室の目が一斉に集まる。

担任の表情は明らかに困惑していて。

「…えっと、」

間違いなく、ここは俺の教室なのに、
新学年の教室に紛れてしまったような感覚の中で。

「おせーぞ、郭哉!」


当たり前のように笑い掛けてくれる、桃耶の存在にどれほど救われた事だろう。



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