ある夜の秘恋の噺
ただいまー
***
「ただいまー」
俺たちが帰って来る事を見越して、開けっ放しになっていた自分の家の扉を開けると、なぜか俺にひっついたままの辰壬さんも「ただいまー…」と呟いた。うんうん、挨拶は大事だからな。
「…おかえり、びしょびしょだな」
竜友は相変わらず変なTシャツを着て、プリンの容器をつっついていた。ってあれ、プリン?待ってそれ俺の、
「そのままでは風邪をひくぞ?」
にっこりと、綺麗に笑んだ竜友は俺の後ろの辰壬さんに目配せをした。途端に、俺の体が宙に浮いた。
「か、カグヤ…風邪…!?」
顔を真っ青にしながら、うちの狭い風呂場に俺を抱えて走る辰壬さん。いやいや、むしろアンタのが問題なんだが。
ってか俺のプリン…
絶対に後で請求してやる…
***
大人の男二人で入るのは流石にキツい。だってうちはユニットバスだし、シャワーカーテンが煩わしい。
辰壬さんも使い方がわからないのか、カーテン開いたままシャワーを出した。
トイレまでびしょびしょになる。
けど、止める事は出来ないのだ。なぜなら俺はこの間ずっと彼に抱きしめられているから。
窒息するくらい、力強く。
「やだ、…カグヤ…!やだ」
「…っ、大丈夫だか、ら!息苦しいから!」
とりあえず、腕を緩めさせたが密着度は変わらない。壁に押し付けられるように、俺は抱きしめられていた。
なんで、こんなに切羽詰まってんだろ。
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