ある夜の秘恋の噺
3
『…カグヤ?』
困ったように、尋ねる辰壬さんに俺は高らかに宣言する。
「抱きしめるくらい、いくらでもしますから。だから一緒に帰りましょう、辰壬さん」
びくり、と辰壬さんの体が震えた。あぁ動揺しているなぁと思ったのもつかの間。
俺がしがみついていた巨体は急に縮んで。代わりに長い腕が俺に絡みついた。
「カグヤ、カグヤ…!」
「ちょ、あの辰壬さんなんで……裸なんですか…?!」
ちょっと予想はしていたけど、まさか裸なんてな。しかも俺とすごい密着してるし、力強いし。ぎゅうぎゅうしてる。
「カグヤ、約束…!離さない、ずっと…!」
「いや、ずっとは無理ですよ。それよりあの、服を…!」
言っても聞かないか。俺はひっそりとため息をついて、冷たい川の中で何が悲しいか裸の男に抱きしめられ続ける訳だが。
急に、俺を覗き込んできたアメジストの目に何か胸が騒いだ。
「やっぱり、カグヤは変わらない」
「え…」
俺のおでこに、ひとつ。
キスをした彼はやけに色っぽい笑みを浮かべる。
「いつでも、優しいね…カグヤ。でもそれ、…あまり良くない」
おでこですら、俺はパニックになってたのに。辰壬さんは俺の顎を掴むと、噛みつくように口内を侵した。
「…っ!」
あ、ヤバい。頭が沸騰しそうになる。がくがくしてた足から力が抜けて、完全に膝が着く前に辰壬さんの手が強く俺の腰を抱いた。
「…襲うって、言った…よ?」
あー、そういう事ですか。
そりゃまあ、勘違いした俺が悪いのかも知れないですけどね!?
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