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ある夜の秘恋の噺



『…カグヤ?』


困ったように、尋ねる辰壬さんに俺は高らかに宣言する。


「抱きしめるくらい、いくらでもしますから。だから一緒に帰りましょう、辰壬さん」


びくり、と辰壬さんの体が震えた。あぁ動揺しているなぁと思ったのもつかの間。
俺がしがみついていた巨体は急に縮んで。代わりに長い腕が俺に絡みついた。


「カグヤ、カグヤ…!」


「ちょ、あの辰壬さんなんで……裸なんですか…?!」


ちょっと予想はしていたけど、まさか裸なんてな。しかも俺とすごい密着してるし、力強いし。ぎゅうぎゅうしてる。


「カグヤ、約束…!離さない、ずっと…!」


「いや、ずっとは無理ですよ。それよりあの、服を…!」


言っても聞かないか。俺はひっそりとため息をついて、冷たい川の中で何が悲しいか裸の男に抱きしめられ続ける訳だが。


急に、俺を覗き込んできたアメジストの目に何か胸が騒いだ。

「やっぱり、カグヤは変わらない」


「え…」


俺のおでこに、ひとつ。
キスをした彼はやけに色っぽい笑みを浮かべる。


「いつでも、優しいね…カグヤ。でもそれ、…あまり良くない」


おでこですら、俺はパニックになってたのに。辰壬さんは俺の顎を掴むと、噛みつくように口内を侵した。

「…っ!」


あ、ヤバい。頭が沸騰しそうになる。がくがくしてた足から力が抜けて、完全に膝が着く前に辰壬さんの手が強く俺の腰を抱いた。


「…襲うって、言った…よ?」


あー、そういう事ですか。
そりゃまあ、勘違いした俺が悪いのかも知れないですけどね!?


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あきゅろす。
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