「痛い…っ!痛いよ、蔵っ。」
「今日、忍足と楽しそうやったなぁ。」
「そんなことっ「言い訳はええ。」
鳩尾を思いっきり蹴れば、口から血を吐いて動かんくなった。ああああ、うざい。
「何の話しとったん。」
「…怪我どうし、たんって、心配され、ただけ。」
俺は舌打ちをすると、床に転がってる名前を見下ろした。息も絶え絶えで、今にも死んでしまいや。無防備に放り出されている四肢を全て折ってしまいたい衝動をぐっと堪えると、俺は名前の首をふんずけた。
「くっ、苦しい…っ、」
「で、なんて言ったん。」
「…こ、ろんだだ、け…っ…て。」
「そんな見え見えな嘘つくんやったらなぁーシカトせぇよ。俺が疑われる、やろ…っ。」
語尾に合わせて、ふんずけてる足に力をいれる。ははっ、見てみぃ。だらしなく涎垂らして、呼吸できんくなっとる。
「俺に疑惑かけて、嫉妬させて楽しかったやろ?」
「ごめ、っなさ、い、」
「死んでまえや、お前。」
ぎゅうと徐々に力をいれて踏んでいく。あっ、涙まで流れてきよった。嫌やなぁ、名前が悪いのになんか俺が悪いみたいや。
名前の腕が弱々しく俺の靴を掴む。なんなん、抵抗すんかいな。
「くっ、蔵ぁ、す、き…ぃ」
その瞬間の名前の目が、真直ぐ俺を捉えて、俺を攻めるんでもなく、ただ愛しいものを見るような目で。なんか、よぅ分からんけど、俺はその目が怖くて、足をどけた。脱力してその場にしゃがみ込む。
「はっ、なんなん…っ、その目ぇ。」
「…蔵之介、」
名前は痛そうな体を起こして、縋るように…ちゃう、慰めるように俺を抱きしめた。
「ごめんね。」
「っ、!」
なんか分からんけど、俺は泣いてた。こいつの腕の中が心地よくて、わんわんと泣いてしまった。壊したかったんじゃない、ただ不安やっただけ。
「ごめん、ごめん、な…ぁ。」
「いいよ、怒ってないから。」
「名前、好きや、大好きや…っ。」
「私も。」
「俺を捨てんといて。」
「捨てないよ、私はずっと側にいる。」
よしよしと頭を撫でられて、心はどんどん落ち着きを取り戻す。顔を上にあげると名前が笑ってて、それがどうしようもなく愛しくて口付けた。
毒入りのクッキー
狂ったことが分からぬように、二人で狂いましょう。甘い甘いムードに酔いながら、狂気に溺れてゆけばいい。