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inviso firmamento(嫌われた大空)
0-2
 とある金曜日の、帝光中学バスケ部での事。
部活終了後の部室で、黒子は自らの母が前から目をつけていた隣町の並盛にある『ラ・ナミモリーヌ』というケーキ屋に行こうと、マネージャーである桃井と話していた。
彼女はデートのような物だと浮かれていたのだが、話を聞いてたらしい青峰や黄瀬、甘い物には目がない紫原等も行くと言い出す。
最終的には『キセキの世代』と呼ばれる全員で行く事になってしまった。

(家からは少し遠いけど、明日は土曜日で部活も休みですし。 買って帰りますか)

そんな風に黒子は考えていた。
あの時までは。


 落ち込む桃井を緑間が慰めながら、彼等は並盛町を歩いていた。
そんな時ふいに黒子の耳に何かの音が届く。
最初は何かを殴る音、次に誰かの呻き声、そして怒鳴る声。

「今の……は……?」

気の抜けたような声で桃井が呟いた後、一度全員で目を合わせてから音の発信源へと走る。
目に入った光景に、彼は一瞬声が出なかった。
半円状に並ぶ同年代の少年達が十数人と、その奥にいる、ボロボロの小さな、同じく同年代の少年。

「何をしてるんですか!?」

一番前を歩いていた為に初めに着いた黒子がそう言えば、今気づいたのか不良らしき周りの少年達は皆走り去っていく。
後から来た緑間と紫原が、真ん中に居た少年の体を支えながら少し起こした途端、口を開いた。

「っ! 何、これ」
「……ひど過ぎるのだよ」

彼の体は傷だらけで全身泥と血に塗れ、緑間が言うには異様に軽く、一目見ただけで分かるほど、明らかにボロボロだった。

「これは……すぐに手当をしなきゃ危ないわね」
「ここからなら俺の家が近い。 そこに運ぼう」

赤司の言葉に、黒子達は一瞬驚いた後頷く。
黄瀬が背負おうとすると相手の体はスンナリと持ち上がってしまった。
ふとスクールバッグがあるのに気がついて黒子が拾い上げると、そこにはやはり学生証が入っていて

「並盛中学校2年、沢田綱吉……ですか」

彼の名前があった。

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あきゅろす。
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