素直なアマノジャク【連載中】
19
「千晴ちゃん。」
「…はい?」
ロッカールームのドアノブに手をかけたところで後ろから声をかけられ動きを止めると、
「話があるんだけどいい?」
「…はい…。」
「誰もいないしそっちの部屋入って話そうか。」
同じバイトで3つ年上の大学生の佐川さんがあたしが手をかけてるドアを指差して言った。
「…でも、」
「あぁ、女子の方に男が入ったらマズいか。じゃあこっちで。」
腕を掴まれてグイッと引っ張られる。
「ちょっ…、」
「いいから。」
「…ヤ…っ、」
「話すだけだろ。来いよ。」
抵抗してみたものの、あたしの力では佐川さんの腕を振り払うことが出来ず、軽々とロッカールームに引きずりこまれた。
「…っ…!」
叫ぼうとしたのに、うまく声が出ない。
バタンッとドアの閉まる音がして、あたしは男子用ロッカールームに連れ込まれた。
薄暗い部屋。
腕を引っ張られ冷たい壁に背中を押し付けられた。
掴まれた腕が痛い。
自分の身長よりかなり大きい佐川さんがあたしの顔を覗き込む。
…目が合った瞬間、ゾワっと背筋に寒気を感じたかと思うと、
「千晴ちゃん、オレと付き合わない?」
薄気味悪く笑う佐川さんが、傾けた顔をゆっくりと近づけてきた。
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