素直なアマノジャク【連載中】 15 「……、ご注文は、」 「ちいちゃん、足速いね〜。」 「ご注文、」 「風邪引かなかった?」 「……。」 「大丈夫?」 「ご注文をお伺いしたいんですがっ!」 「あ。プリンパフェ。」 「プリンパフェですね。ご注文は以上でよろし、」 「でもね、ちいちゃん。女の子は身体冷やしたらダメなんだよ?」 次の日も、『あおいそら』はあたしがバイトに入る時間にお店に来ていた。 その次の日も。 その次の日も。 「ご注文がお決まりでしたら、」 「キャラメルラテ。」 「キャラメルラテですね。」 「です。」 「ご注文は以上でよろしいですか?」 「ちいちゃんの携帯番号とメアド。」 「少々お待ちください。」 「え!?教えてくれんの?!」 「キャラメルラテ!!!……を、お持ちするのをお待ちください。」 「なんだ〜…。あ、じゃあオレの番号とメアド書いて渡すから送ってきてねっ。」 「結構です。」 「待って待って、今書くから。」 あたしがバイトに入らない日は知らないけど、あたしがバイトに入る日には必ず『あおいそら』がいた。 とはいえ、あたしは『あおいそら』達のお遊びに付き合ってやるほど人間出来てないし、ヒマでもない。 そっちがその気ならこっちにもやりようがある。 そっちがとことん絡んでくるつもりなら、こっちが相手にしなきゃいいだけの話。 そうと決めたら相手にしない。 どんどん絡んでくるといい。 どこまででもスルーしてあげる。 「ちいちゃん。」 『あおいそら』がいつものように人懐っこい笑顔を向けてきても。 「……。」 あたしは、視線を合わせることなくそれをスルーする。 「ちいちゃん。」 「……。」 それを繰り返し。 「ちいちゃん。」 「……。」 繰り返し。 「ちいちゃん。」 「……。」 何度も。 「ちいちゃん。」 「……。」 何日も。 「ちいちゃん。」 「……。」 繰り返して。 「ちいちゃん。」 「……。」 繰り返して。 「…ちいちゃん。」 「……。」 「……。」 「……。」 2週間が経ったある日。 「………オレ…、そんな迷惑…?」 ついに『あおいそら』は眉を垂らして静かに呟いた。 [*前へ][次へ#] [戻る] |