素直なアマノジャク【連載中】
13
整った顔の『あおいそら』の真剣な表情。
ほんのちょっとだけドキッとしてしまったけど、あたしは絶対に屈しない。
だって、それもあたしをオトすための作戦でしょう?
どんなにかわいい顔にも優しい言葉にもあたしは屈しない。
かわいい顔で心配すれば誰でもオチると思ったら大間違い。
今までその顔で何人の女の子を弄んできたかは知らないけど、世の中そんなに甘くないってことを教えてあげる。
ほら。
「濡れて帰りたいんだからほっといてくれる?」
これなら傘を差し出す優しさアピールも出来ないでしょう?
あたしがあたしの意思で濡れるんだから、強制的に傘に入れることなんて出来ない。
そう確信して再び土砂降りの中へ一歩踏み出そうとする。
と、
「風邪引くって。」
予想に反して『あおいそら』はあたしの腕を掴む手を緩めず、真剣な眼差しをこっちに向けていた。
「放してよ。」
「ダメ。」
「放してって。」
「ダメだってば。」
「傘なんかいらないから。」
「風邪引く。」
「放して!濡れたいって言ってんでしょ!」
バイトで疲れていることもありこれ以上感情を抑え込むことが出来なくなったあたしは、大きな雨音に負けない声で怒鳴り散らして『あおいそら』の手を振り払った。
もういいでしょう?
ここまで言えばさすがの『あおいそら』も引くはず。
このやりとりを見てるかもしれないお友達だって、こんな土砂降りの中じゃ観賞しにくいでしょう?
いい加減、あたしを巻き込まないで!
もうあたしに関わらないで…!
…なんていうあたしの願いもむなしく、『あおいそら』は、
「じゃあ俺も濡れていこ。」
なぜか差していた傘をたたみ、ずぶ濡れになりながらニッコリ笑った。
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