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素直なアマノジャク【連載中】
11
ご飯時にはどこの飲食店も忙しくなるように、このファミレスも例外ではない。
夕方になると客足は増え、自分に与えられた仕事を脇目もふらず淡々とこなしていく。


あたしの勤務時間はそのピークが過ぎた頃に終わる。



今日のバイトも大きな失敗もなく無事終わった。
ホッとして自分の勤務時間の終わった店内をザッと見渡してみる。

さっきまでとは違い、まばらになったお客さん。
食事中だったり、雑談中だったり、携帯をいじっていたり、ノートを広げていたり。
同じ場所にいて全く関わることもなく違う時間を過ごす不思議な空間。


そんな中、ふとさっきまで『あおいそら』が座っていた席に目をやると、そこでは小太りのおばさん3人が大きな笑い声を発しながら食事の真っ最中で、『あおいそら』本人の姿は店内のどこにもないことに気付いた。




…一体あの子はなんだったのか。
なんであたしに告白してきたのか。
なんで相手があたしなのか。

疑問も不満も有り余るくらいあって。
何もかもが納得いかなくてイライラする。






いつものようにファミレスの制服から学校の制服に着替えて、ロッカールームのカーテンの隙間から外を眺める。

見えるのは、いつの間にか振り出した土砂降りの雨。
屋根から滴る水音と降りしきる大量の雨音が憂鬱になるほど見事なハーモニを奏でているけれど、今朝は寝坊して天気予報を見る余裕もなく家を飛び出したから、傘なんて持ってきてない。

変な告白はされるし、お気に入りのストラップもいつの間にか失くしてるし、昔から雨が降るとろくなことがない。





「………最悪…。」

ため息一つついて鞄を持ち、店内を通って外への扉に向かう。



傘なんてない。
むしろ待っていてもやみそうにないくらいの土砂降り。

仕方ない。
駅まで走ろう。

なんだか精神的にすごく疲れた。
さっさと帰って寝たい…。





と。
扉を開けたそこには、





「あ。ちいちゃん、お疲れ様。」

傘を差してニッコリ微笑む『あおいそら』が立っていた。



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あきゅろす。
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