彼とクラスメート


 彼は定期的の出される彼の祖父の薬を祖父の代わりに受け取るため、その病院に顔を出していた。
 彼は下宿生で、その日から始まった三連休を利用して故郷に戻ると言ったらその役目を任されたのであった。

 薬を受け取り、彼は出口へと向かう道をゆっくりと歩きながら受け取った薬を処方箋を見ながら確かめていた。

「えっと、塗り薬に……」
「不破くん?」

 と、後ろから彼を呼ぶ声がした。少し驚き、確かめていた薬を落とさないようにしっかりと手に持ち振り返った。

「えっ?」
「あ、やっぱり不破くんだ! こんにちは」

 彼が振り返るとそこにいたのは彼のクラスメート、竹田由依だった。彼女は彼に向かって笑顔を向け、手首の先だけで手を振っていた。

「竹田さん? またどうして病院に? もしかして風邪か何かで?」

 彼は彼女を見ると不安そうな表情を浮かべた。今の時期、病院にいるというのは……。彼は彼女のことを心配した。
 彼らは、そう、年を越せばセンター試験があり、たくさんの試験が控える高校三年なのだ。

「ううん、私は叔母のお見舞いにね。そういう不破くんは?」

 彼女は彼に訊かれたことと、その表情から彼が自分を心配しているのではということを感じ取り、そう返した。一方で彼もまた彼女と自分は同じようなものだと思い、

「僕? 僕は、これ、祖父の薬を受け取りにね」

 彼女に向かい薬の入った袋を見せ、笑って答えた。彼女は「そっか」と言うと彼女らしい無邪気な笑顔を見せた。そしてその時、彼は初めて気付いた。

 彼女の目の下にはいつもの彼女より、クマがはっきり見えているということに。



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