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loNG THE PRINCE OF TENNIS dreAM
0-3

「フィッチ」

「スムース」










「フィッチ?」

「スムース?」


「やれやれ、初心者はこれだからね〜!
あれはテニス用語で、順番を決めるときに使うんだ。

…グリップのマークが表だと、スムース。裏だと、ラフってこと!」










桃城がラケットを回す。

カタカタン─





「残念、ラフだ」

「………」

「サーブはやるよ。俺はこっちのコートをもらう」





「えっ!?桃城先輩、先にサーブする権利、取らないんですか?
勝ったのに!」

「…早くツイストサーブ見てぇじゃん!」

「か、かっこいい!桃城先輩…」

「桃ちゃんでいいよ!」

「いや、桃ちゃんなんて呼べないっすよ!
俺、審判やってもいいっすか?」

「おぅ、頼む!」












『まったく武ったら、かっこつけちゃって…』

「ところで藍羅ちゃん。どうだい、女子テニス部は?」







「え?」






『そうですね…

最近は、男子の方に付きっきりだったから、女子の方はほとんど副部長に任せてるんで……
あんまりよく分かんない。っていうのが、本音ですかね〜……

まったく、部長のくせに情けない…ι』


「ハハハ!そんなことないさ!

…しかし、なるほど。そしたらこれからは、中学校生活最後の一年間だから、どちらもさらに大変だなぁ!」


『本当に。ちょっと心配です…ι』





「あ、あの〜」

『ん?』


桜乃だ。

「先輩、女子テニス部の方なんですか?」

『あぁ、私は、女子テニス部部長の羽山藍羅よ!』


「えぇっ!?部長さんですか?

…私、女子テニス部に入部しようと思って、もう入部届けも持ってきたんです!」


『あら、そうなの?ありがとう!

…もしよければ、今入部届けを預かってもいいけど?』


「あっ、じゃあ、お願いします!」

桜乃は、入部届けを藍羅に渡す。

『はい。確かに』

それを笑顔で受けとる藍羅。















「それでは、ザ・ベスト・オブ・ワンセットマッチ 越前サービスプレイ!」

堀尾が言った。





桃城がラケットを持って構える。

リョーマは左手でボールを高く上げる。

右手にはラケット。










『(…まだ戦闘体制じゃないわね?)』












ラケットを振り下ろす。


「フォルト!」










「わぁー!やったやった!リョーマ様かっこいい!!」

「ちょっと!今のはフォルトだからやり直し!
もう一度ミスしたら桃城君のポイントよ!」

「えっ、そうなの?
うぇーん、リョーマ様ー!!」


『アハハ…ι

(…けど、やっぱりスピードはあるわね)』














「いいよ、スライスサーブは。

…出し惜しみすんなよ」



「ヤダ」

「なっ!生意気な奴…」

再びリョーマはボールを高く上げる。










「ツイスト…サーブ?」












大きくラケットを振り下ろす。

「なっ…!?」

ボールは桃城のラケットを弾き飛ばした。












「「「「「あっ!!」」」」」

『………』

「ツイストサーブ…信じられん」



「あの、そのツイストサーブってなんですか?」





『一般的な打ち方は、左回転のスライスサーブ』

「「「「えっ?」」」」

『ツイストサーブは、ボールに逆回転を与えて、ボールはトップスピン気味に跳ねる』

「それって、顔面目掛けて球が跳ね上がってくる。ってこと?」

『えぇ。そう簡単には返せないわ』

「そのサーブを中学生が打てるなんて…信じられん」

「素敵ー!!ますますかっこいい!リョーマ様ー!!」












どうやら、コート内では、またリョーマが桃城を挑発したらしい。













『(リョーマって、相手を挑発するのが好きなのね…ι)』










リョーマはまたツイストサーブを繰り出す。

桃城は一気に前へ出る。


「よし、ドンピシャ!」

だがそのボールはネットに引っ掛かって落ちた。



「………フッ、タイミングだけじゃ打ち返せねぇ。ってことか。

面白ぇ」












『(武が、パワーで押されてる…)』











「30-0 越前リード」








リョーマは再びツイストサーブを繰り出す。

桃城が前へ出て、打ち返す。

今度はネットに触れ、リョーマのコートに入った。


「おっ、ラッキー!ついてたぜ!」












『(打ち返した…

慣れてきたみたいね)』






「30-15」



そしてまた、リョーマのツイストサーブ。

桃城が追い付き、今度は正確に打ち返す。












「「「「「あぁっ!返した!」」」」」

『………でも、きっと…』















「フッ」

難なく打ち返すリョーマ。

「なっ!……チッ」

桃城も負けじと打ち返す。


そしてリョーマは…








トンッ─














「あっ!!」

『ドロップボレー…』












桃城は足を絡ませ、その場に座り込む。

「ドロップボレー……

…お前、そんなモンも出来んのかよ?」





「40-15」










「キャー!!リョーマ様ー!頑張ってー!!」


『越前南次郎の息子…ねぇ…。

………
(そういえばしばらく会ってないけど、どうしてるかしら?)』





ザワザワ─

桜の木々が風で揺れる。





桜吹雪の中で、リョーマは言った。




















「まだまだだね」

「ん?」












『(あぁ、そっか…)』





リョーマは右手で持っていたラケットを、左手に持ち変えた。


リョーマがボールを上げようとしたとき─



「ちょっとタンマ!」

「えっ?」












『??』















「やーめた!
この辺で勘弁しといてやるよ!」







「「「「「えぇー!?」」」」」

『……………』












「…別にいいけど?」

そう言ってリョーマは制服に着替え、ラケットを閉まった。


そのあと、一年生達は何かを話していた。













「いいのかい、桃城?」

「あっ、ばあさん」

『スミレちゃん!』

「このままじゃ、あの1年坊主にナメられっぱなしだよ?」

「そうかもしれないッスね…」

「よく言うねぇ。右足の捻挫さえ治ってれば、お前なら…」


「いや、アイツ気付いてましたよ。

…ハナッから」


「フッ、そうかい」



「先輩相手に利き手と逆の手でやりやがって…ハンデのつもりかい。

……怖いねぇ」



桃城はそう言うと、ラケットを持って行ってしまった。







「フフフフ…」

『…ねぇ、スミレちゃん』

「ん?なんだい、藍羅?」



『私ね、なんでか知らないけど、今年1年間は、今までで一番楽しい年になりそうな気がするのよ!』

「ほぉ…。そりゃあ楽しみだねぇ…」

『えぇ!
明日には、“みんな”も帰ってくるでしょ?楽しみだわ!!』



藍羅はそう言って不敵に微笑むと、満足そうな顔をして、ご機嫌で去っていった。



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