loNG THE PRINCE OF TENNIS dreAM
0-6
そして、試合が始まってから何時間が過ぎただろうか。
空には綺麗な、オレンジ色の夕日が輝いている。
二人───桃城と藍羅は、コート内に座り込んでいた。
「はぁ、はぁ、はぁ…」
『はぁ、はぁ、はぁ…』
ゲームカウント、「4-6」
そう。
なんと桃城は、あれから必死に試合に食いつき、藍羅から4ゲームもとったのだ。
「勝ちたい」という純粋な気持ちが、自然と桃城を動かした。
だが結局、藍羅が少しずつ点を入れていき、6ゲームとったところで、試合は終わった。
“奇跡の大逆転”とまではいかなかったが、それでも二人が握手をすると、周りから大きな声援と拍手が聞こえた。
二人はとたんに崩れ落ち、今の状態に至る。
「はぁ、はぁ…
や、やっぱり…」
『……?』
「やっぱり強いッスね、先輩!」
『!!………』
その笑顔には、何の陰もなかった。
負けてしまったが、そんなことは関係ない。とでも言うかのように、明るすぎる笑顔だった。
桃城が言う。
「負けちまったけど、すっげえいい試合できたと思うんで、良かったッス!ありがとうございました!!」
『武…
クスッ。…えぇ、そうね。私もいい試合ができたと思うわ。
……ありがとう』
立ち上がって、桃城に手を差し出す。
「先輩………
ニッ。…こっちこそ!」
座ったまま、藍羅の手を握り返す。
と……
「ぅおうっっ!?」
急に藍羅が桃城の手を引っ張って、きちんと立たせたのだ。
『ふふ…大丈夫?』
「あ…は、はい!///」
「いい試合だったね」
「えっ?」
『周助!』
審判の役目を終えた不二が、二人のところへやって来た。
「桃城…君?」
「あ、は、はい!!」
「君、テニスの素質あるんじゃないかな。部活はもちろん、テニス部に入るんだよね?」
「え、あ、あの「入るんだよね?」
「は、はい…」
─なんか威圧感を感じた…
「そうか。そうだよね。当然だよね。うん。
じゃあ…これからよろしく。だね?」
「……………はい!!」
「……………何かな?
今の間は?」
「え、いや、あの「何かな?」
「な、何でもないッス…」
「ふーん。………
ま、いいけど」
「(ホッ)」
『武!』
「えっ?あ、何スか、藍羅先輩?」
『……………』
「…?」
『……………』
「…?ι」
突然黙り込んだ藍羅。
『ねぇ?』
「は、はい!」
『それ、やめて?』
「………え?」
『その敬語、やめましょ』
「え……いいんスか?」
『構わないわ。堅っ苦しいのは嫌いだもの。
っていうか、試合始める前に言ったじゃない』
「あ…」
『それから…』
「?」
『私のことは、藍羅って呼ぶんでしょ?』
「えっ………でも俺…」
『ね?』
「ぅっ…!!////」
藍羅に顔を覗き込まれる。
「(ち、近っ///)わ、分かっ、た…藍羅////」
『(パアァァ!)よし、オッケー!』
キャッキャッと喜ぶ藍羅の隣では不二が、
「?何、藍羅?そんなに嬉しいの?え?(黒)」
と呟いている。
「あの、先ぱ……
藍羅!////(慣れねー!!)」
『?…何?』
「お、お願いがあるんだけど…」
『お願い…?』
「はい!…あ。
あ、あぁ!あの…聞いてくれ………るか?」
『クスッ。無理に頑張らなくてもいいわよ?』
「い、いや、大丈夫ッス!……………あ。」
『(クスクス)それで?』
「あ、はい!あの…」
「俺、今までテニスって、ただやってるだけで、あんまり深く考えたこと、なかったんだ」
『………』
「この試合だって、初めは、その…藍羅…と付き合う。とか、かっこいいとこを見せよう。とか、そんなことしか考えて、なかったし…」
─ここまで言って、なんかものすごく冷たく黒い視線を感じたのは、気のせいにしたい
「でも…」
『…?』
「俺、この試合をやって、なんか、今までに感じたことのない気持ちになったんだ」
『感じたことのない、気持ち…?』
「あぁ。俺………
“勝ちたい”」
『!!』
「素直に、そう思った」
『………』
「それから、“楽しい”って思った」
『…………』
「今までテニスをしてて、こんな感情もったことねぇのに、なんか、そう思った」
『………』
「藍羅」
『……?』
「ありがと、な」
『え…』
「よく分かんねぇけど、なんか言いたくてよ!」
『武……』
「あ、それから…」
『?』
「あの…試合始める前に、俺が言ったセリフ、覚えてるか?」
『えっ?……………あ』
──もし俺が勝ったら、俺と付き合ってください!!───
「…あれ、どうにかならねぇかな?」
『え?』
「いや、その…やっぱり諦めきれねぇ…っていうか…/////」
『………』
「だから、その…///」
いちいち顔を真っ赤にする桃城。
『………クスッ』
「…?」
『そうね…でも、結果的には、私に勝てなかったわけだし…』
「…………ι」
そう言うと、桃城はとたんにショボくれた。
『じゃあ…こうしましょ!』
「…?」
『私が卒業するまでに、私に勝てたら。そうしたら、付き合ってもいいわ』
「…ほ、ほんとか!?」
『えぇ』
「ぃよっしゃーーーーー!!!!!」
大喜びな桃城。
それを見つめる藍羅。
そして怪しく(黒く)微笑む不二。←
4月×日。
この日の青学テニスコートには、三人の笑顔(1人黒)があった。
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