男を感じる瞬間
おぼんを持ちながら悠くんが座っているソファに向かう。
「紅茶、だけどいい?」
テーブルの上に、まだ何も入っていないティーカップと紅茶の入ったポットを置いた。
ほのかに紅茶の香りが湯気から伝わってくる。
「平気ですよ。ありがとうございます」
「あ、お砂糖入れる?」
「はい」
私は小さな戸棚から砂糖の入った瓶を取り出した。
「んっ…かたい…」
蓋を開けようと回してみるものの、固く閉められていて開かない。
「やりますよ?」
そう言って、悠くんは近づいてきた。
「え、や、お客さんは座ってて!」
「でも…」
悠くんは私が持っている瓶に手を伸ばした。
指先が触れ合う。心臓がきゅっと締め付けられる。
「かして?」
「あ、うん…」
パッと瓶から手を離して一歩後ろへ下がった。
すると、意図も簡単に瓶の蓋を開ける悠くん。
さすが男だ…
「開きましたっ!」
「…ありがと」
嬉しそうに一歩前へ進んでくる悠くんを見て、また一歩後ろへ下がった瞬間──
「明里ちゃんっ!!」
後ろにあったスリッパに足を滑らせた。
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