楓と悠。 それは高校に上がってすぐの事。 俺は当時3年生だった男5人に人気の無い場所まで連れてこられたんだ。 周りは茂みや木が並んでいて、不気味なくらい静かだった。 そして俺は押し倒された。 容姿の事もあり少し体術を習っていたが、やはりガタイの良い奴にはまるで敵わない。 大声を出さないように口を塞がれ、もうダメだ。 そう思った直後、 「無理やりはヤメとけよ」 「!?誰だ!」 (は?どこから声が…?) 「上だ」 そいつは現れたんだ。 「せっかく木の上で寝ていたのに」 面倒だ…、そう言いながら地面に降りてくる。 だが次の瞬間には、俺を押さえつけていた奴が吹っ飛んでいた。 「なっ…!てめぇ!何しやがんだ!」 「何って…ゴミ掃除」 そいつはずっと無表情で男達を吹っ飛ばしていく。 圧倒的に強くて…格好良かった。 「あー疲れた…おい。その姿じゃマズイだろ?これ着とけ」 無表情のまま投げ付けてきたのはブレザーだった。 俺がそれを受け取るとスタスタと歩いて行っちまったんだ。 ろくにお礼も言ってないのにな。 「…北条、楓……」 だからブレザーに書いてあった名前を頼りに探しまくって、友達になった。 それが俺と楓の出会いだったんだよ。 「あの華奢な体でガタイの良い男を5人も吹っ飛ばしたんだ。峰岸じゃ勝てないぞ」 「楓って格好良いよね」 「…………」 「なんだ?何考え込んでんだ峰岸」 「……なあ楓さ、その時「おーい注文してきてやったぞ」」 「あ。お帰り楓ー」 「ありがとな」 「ぁあ」 「…………」 この時の和緋の質問は掻き消されたままになった。 [*前へ][次へ#] [戻る] |