side:茜 「ラッキー!!鈴が落ちてたよー!」 碧がスキップしながら、落ちていた鈴を拾った。 そろそろ20分は過ぎただろうか。 周りを見ればもう3分の1くらいに減っている。 ナツとハヅは……ぁあ、居た居た…楽しそうに鈴取りをしている。 「ねぇねぇ茜、確かさ、5人になるまでやるんだよね?」 「うん」 「ナツとーハヅとーボクに茜?あと1人は誰だろー?」 「…俺達も入ってるんだ……」 情報屋をやっている俺達は、ある程度の喧嘩能力はある。 けどそれはあくまで緊急事態に対処する為の能力で、ナツ達のような喧嘩をする為じゃない。 どちらかと言えば逃げる為の能力だ。 「あとは逃げ切れば大丈夫だよ茜っ!!カッコイイとこ楓っちに見せちゃおうぜっ!!!」 「…まぁね」 これでも男の子ですから。 気に入った奴にはカッコイイ所を見せたいもの。 それにしてもさすが双子だね。 揃って北条楓を気に入っちゃってさ。 「それは無理だよー」 ――ガッ!! 「………………ぇ…?」 一瞬、何が起きたのか分からなかった。 低く、間の抜けた声が聞こえたと思ったら、目の前の碧が乾いた音と同時に消えた。 代わりに、俺の前にはオカッパにウェーブのかかった髪を揺らしながら、こちらを見据える一人の男が立っていた。 「―――――っ碧!!!」 あまりに突然の事で思考が停止したが、すぐに我に返る。 数メートルほど吹っ飛ばされた碧の元へ駆け寄った。 「ムリムリ。こめかみを打ったからしばらく動かないよー」 「…っ碧、碧!……クソ!後ろからなんて卑怯だろお前!」 気を失っている碧をそっと地面に寝かせ、男を睨む。 俺は、この男を知っている。 「卑怯?やだなー…喧嘩に卑怯もクソもあるのー?」 「…………二ノ宮…!!」 [*前へ][次へ#] [戻る] |