目を逸らしたら負けだと思うからさ。
「……藍原!?」
ヌンチャクで次々と薙ぎ倒していく柚に驚いたが、柚の騎馬である男を見て納得した。
あいつは『FALLEN LEAVES』の幹部…つまり和緋の部下だ。
どうゆう経路かは分からないが、柚は藍原に修行をつけてもらったのだろう。
何故ヌンチャクなのかは不思議だが…有り難い。
「柚くん強くなったねー!!」
「…ヌンチャクには突っ込まんのか連夜……」
「大人の事情なんじゃない?」
どんな事情だよ。
「楓、楓!!柚の騎馬の奴!!アレ俺のチームの奴だぜ!!まじかよこの学園だったのかー!!」
「へぇ…そりゃ偶然だな」
「だよな!!おーい!!負けんじゃねぇぞムッツリーー!!」
和緋は藍原に気付くと声を張り上げて応援し始めた。
…ムッツリは可哀相だからやめてやれよ。
「あの子って峰岸の部下だったんだ〜」
「1年には見えんな……縮め」
「悠…本音が出てるよ」
「頑張れーーーー!!!!」
和緋の懸命な応援が藍原に届いたのか、不意に藍原がコチラを向いた。
総長である和緋の存在に気付くと軽く会釈をして、今度は俺に視線を向けてくる。
(…………?)
細められたその目はまるで俺に探りを入れる様な視線だった。
だが敵意もなければ悪意もない。
そして俺と藍原は、お互い目を逸らさない。
「――――――――」
さすがに競技中によそ見をさせるのは良くないと思い、俺は声には出さず、口パクで藍原に話し掛けた。
意味が分かったのか、驚いた顔をして小さく頷いた。
口元が僅かに緩んでいたのは多分、気のせいじゃない。
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