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たまには優しく。







「……楓ちゃん…」



まだ止まない歓声の中、とぼとぼと帰ってきた颯斗。

なんとなくやつれた様にも見える。



「すみません…最下位になってしまって…」



俯く颯斗の頭にポンッと手を乗せると肩が揺れた。



「気にするな、颯斗」


「か、楓ちゃーん!!」


「むおっ」


「どさまぎで楓に抱き着くな雅!」


「ふがっ!!」



ガバリと颯斗が抱き着いてきたがすぐさま、悠に蹴り飛ばされた。




『ハイハーイ!!!再び実況の宇野碧でーす!!』


『茜でーす』



日比野と鳳に代わり、おてんばじゃじゃ馬兄弟がまた実況係についた。



『いや〜予想外の事態でしたね茜さん!!』


『全くですね。まさか天下の会長様のおかげで最下位になるなんて思ってもみなかったよ』


『ほんとほんと!!』



いつになく饒舌の茜と碧が日比野の方をチラチラと見ながら不満を洩らしていた。

一方、日比野は双子を睨みつけながらフルフルと震えている。


あ。
額に青筋が……



「なぁ、次って何?」


「次は1年競技だよ」


「何ソレ」


「1年生強制参加の競技って事だよ。種目は始まるまで分からないんだ」


「へぇ〜〜」



感心するように和緋が頷く。

1年競技か…
去年の俺達は確かドッジボールだったな…



「じゃ俺等もその強制参加競技ってあんの?」


「今年の2年競技は無いぞ」


「そうゆうこと」


「ぇえー!つまんねぇの〜」



お前はどんだけ体育祭に燃えてんだよ…


ん?
なんか颯斗が静かだな…



「あ」


「どうしたかえ…」



俺の声に反応した悠に向かって人差し指を立てると納得したらしく、颯斗を見ながらフッと笑った。




「…なるほど」


「あれ?…雅、寝てるの?」


「ホントだー」



颯斗は丸くなってスヤスヤと寝ていた。

この広い応援席はただグラウンドにシートを敷いただけだが、それが案外居心地が良い。
ちゃんと屋根もあるからだろう。




「こんなに気持ちよさそうに寝てんだ。少しは寝させてやるか…」



そう言って触り心地の良い髪を撫でると、颯斗が微かに微笑んだ気がした。



















「つーかこのウルセェ中よく寝てられるよなー」


「全くだ」


「なんか楓と雅がバカップルに見える…オレも寝ようかなぁ……楓の膝枕で」




「「ダメだ!!」」






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