勝って食うパンは格別に美味い。
「なぁ〜にため息ついてんだよ楓〜」
「今度はなんだよ…」
言い合っている連夜と颯斗に気付かれない様に近付いてきて、耳元に口を寄せた。
「手合わせ願いたいなぁ…楓?」
ほらな…やっぱりアホなことだろ?
本当にこいつはバトルマニアとゆうか喧嘩好きとゆうか…
いや、ただの喧嘩バカか。
「…遠慮しとく」
「ちぇっ…」
『ぉおっとー!?これはすごい!!なんと立っているのは2人だー!!』
『去年と似た状況だね』
いつの間にかあんなに煩かった歓声が嘘のように小さくなっていた。
聞こえるのはざわめきだけ。
風で砂埃が晴れていき、俺はすかさずそこに立つ2つの人影を目を凝らして見る。
「悠……!」
そこには手を膝について肩で息をする悠がいた。
酷く疲れている様子だったが、大きな怪我ないみたいだ。
良かった、あいつ本当に強くなったな。
連夜の修行のおかげだ…
「じゃあもう1人は……」
「……あいつしか居ねぇだろ」
鳳だ。
『これは驚いたね…副会長なら分かるけど……』
『すごいぞー!!2−S吉原悠!周りの敵をバッタバッタと薙ぎ倒し、見事パンをゲットー!!!』
『悠ちゃぁーーーん!!!』
『葉月様ぁぁああ!!素敵ィィイイイ!!!』
『2−Sと3−S!!堂々とゴォール!!今年のSクラスは一味違うぞー!!』
歓声の中、ふらつきながらも悠は高級あんパンを山ほど抱えて戻ってきた。
…いや別に他の奴等の分まで食べなくても良いんだけど……
「お疲れ、悠」
「…ハァ……疲れた…」
「頑張ったね悠!」
「すげぇじゃん吉原ー!」
「去年の楓ちゃんみたいでしたよ!!」
だからそれはもう良いっての。
忘れろバカ。
運動してお腹が空いたのか、悠はあんパンをすごいスピードで食べ始めた。
「美味いだろ、ソレ」
髪をそっと撫でながら聞くと悠はコクリと頷き
「……………………美味い」
そう言って笑った。
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