意外すぎる接点。
「いや知りませんけど」
「…………」
俺があっけらかんとした様子で答えると、須藤先輩は目を瞬かせた。
視線を逸らさずに見詰めると不意にその目が細められ、更に顔を近付けてきた。
いやいや、近い近い近い!
「……………そういう事にしといてあげようか、今だけは」
「……どうも?」
「椿くんの浴衣姿も見れたしね」
俺の浴衣姿がどうだと言うんだ?
そんなに面白いか?
珍獣か?
なんて思っていると、須藤先輩の手が腰に回され、一瞬肩が揺れた。
「……あの、」
「ん?どうかした?」
アンタの手が俺の体をはいずり回ってんだよ!
つか、俺の貧相な体を触っても何も出ません!
須藤先輩の胸に両手を当て、離れようと体を捻るが…あまり効果が無い。
それどころか、須藤先輩の手がどんどん下に伸びていき…
「……っ…」
浴衣の下の合わせから手を滑り込ませ、太股を撫で回す。
ちょっ…この人変態すぎる!
こういう変態プレイは成川くんにやって下さい切実に!
「うーん…想像以上だね…」
「…離せ……」
「お、そっちが地かな?」
「うるさい…いいからさっさと離せ変態が」
ギッと睨み据えると、須藤先輩は口元を緩め、何を思ったのか俺の肩口へその顔を埋めた。
同時に、太股にあった手が徐々に奥へ進んでいくのを感じる。
「!、待っ……!」
ゴッ・・・・!!!!
「なぁぁにしてんだこの節操なしがぁあ!!!!」
「……っ!?」
なっ…何が起こったんだ…!?
突然、誰かの怒声が聞こえたかと思ったら、目の前…というか俺に密着していたはずの須藤先輩が視界からログアウトした。
信じられないが、吹き飛ばされた須藤先輩は、廊下にあったソファーの下敷きになっている。
まさかとは思う…あのソファーは、須藤先輩に向かって"投げられた"のか…?
「…………り、…璃人…さん…?」
ソファーが飛んできた方向には、鬼の形相で須藤先輩を睨んでいる璃人さんと、その璃人さんを青ざめた顔で見ている武がいた。
武がソファーなんて投げれる訳ない。
じゃあやっぱり、…
「いっっったー〜…ホント乱暴だよね、璃人ちゃんは」
「……よく生きてますね…須藤先輩…」
「俺すごい頑丈だからさ」
いやいやいや、だって『ゴッ・・・!!』っていってたよ?
なんかもう流血沙汰になるんじゃないかと思ったんだけど。
「千景…てめぇいい加減にしろよ…誰彼構わず盛るんじゃねぇって何度言えば分かんだ?ぁ゙あ゙!?」
「はははーいや〜椿くんが思った以上にアレだったからさ」
俺のせいか。
アレって何だよ!…っいや、やっぱいいや。
なんとなく聞きたくない。
「あのー…」
璃人さんと須藤先輩のやり取りをボンヤリ眺めていると、武が手を挙げながら遠慮がちに声を上げた。
その声に、武へと視線が集まる。
「アンタら2人は知り合いなんですか?」
「そういえば……随分仲良さ気ですね」
武の言葉に続けて俺が言うと、璃人さんがあからさまに嫌そうな顔をした。
分かりやすっ!
…なんか、璃人さんのキャラが崩壊している気がするのは気のせいだろうか?
「冗談はやめてくれ胸糞悪い。こんな宇宙生命体と仲が良いなんて、天文学的確率で皆無に等しい」
「俺らは従兄弟だよ」
「おい。何勝手に暴露してんだよ死ね」
「その台詞、バットで打ち返すね」
従兄弟…だと…!?
エロエロ魔人と平凡受け…もとい、外見平凡中身非凡が従兄弟だと!?
そうか…!
そうだったのか…!
「………知らなかった…」
「…椿くん?」
ぽそり呟いたのが聞こえたのか、璃人さんが怪訝そうに俺を見た。
全く…俺のHD(腐男子)センサーもまだまだ甘いな…
「お二人共…恋人同士だったんですね…」
須藤先輩が俺にセクハラしたのは、璃人さんにヤキモチを妬かせる為だったんだ。
しょうがねぇな。
そういう事なら間男にでも何でもなってやるよ!
後でカメラ仕掛けておくからな!
「「「…………………は…?」」」
俺以外の3人の声が綺麗に被りました。
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