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遭遇。








『ヘタレなお前に良いことを教えてやる。この旅館にある池の橋…あれのちょうど真ん中で告白すると叶うらしいぞ』

『!!お、前…』

『早くしねぇと誰かに捕られるかもな……精々粘れよ、会長さん』









ふふふ…
なーんてな!
さっきの卓球で無様に負けた会長に言ってやったのはこの事だ。

これで会長の闘争本能に火がついて、あわよくば成川くんとチョメチョメすれば良いじゃないか!
自分から『何でも言う事を聞いてやる』なんて言ったんだしな。
ヘタレだろうが何だろうが、俺の萌えの為に動いてもらうぜ会長さんよぉ…

(まぁ…あの成川くんだし、そう簡単にはくっつかないだろうがな…)


初めてあの会長に会った時に感じた違和感。

そう。
奴はヘタレだった。
おそらく、人前では気丈に振る舞えるが、いざ二人きりなると手も握れない典型的な隠れヘタレ!

俺の思い描いた王道的俺様何様生徒会長とは似て非なるものだ。
本っ当に惜しい。
顔は良いのになんて勿体ないんだあいつは。


「はぁ…」


人知れず、ため息をついた。

俺と会長の卓球勝負が終わり、今は成川くんが武とダブルスを組み、璃人さんと副会長を巻き込んで卓球を始めている。
(ちなみに会長は負けたショックからか、ソファーで寝転んでいた)

白熱している中、俺は飲み物を買いに自販機を探しに出て今に至る。


「ため息つくと幸せが逃げるよー」

「へぁっ!?」


歩いていた俺の後ろから耳元へ急に声が降りかかり、大袈裟に肩を揺らしてしまった。

今のは誰でも驚くよね絶対。
俺の寿命を減らす気かコノヤロウ。

耳を手で押さえながら振り向くと、そこには意外な人物が立っていた。


「…………司会者さん?」

「そーです司会者さんですよ〜でも名前も覚えて欲しかったなー。ね、椿くん?」


あの部屋割り決めの時に司会をやっていた兄貴攻――ごほん。
…須藤千景さんだ。


「…覚えてますよ、須藤千景先輩」

「へぇ、嬉しいねぇ。ありがとう」

「須藤先輩は何してんですか」

「んー?それはね〜…」


にへら、と笑いながら俺に詰め寄り、片方の腕を壁につき、もう片方の手を俺の頬へ添えた。

美形は近くで見ても美形なんだな。

とかそんなどうでも良いことを考えている場合ではない。
何この体勢。
なんてナチュラルな攻め方なんだ…!
俺じゃなかったら萌えるんですけど!


「君に会う為、じゃダメかな?」


だ か ら !
そういう台詞は俺じゃなくて成川くんにして下さい!
え、てかもしかしてこの人タラシ?
あ。忘れてた。
この人はスイッチが入るとエロエロ魔人になるんだった…(決め付け)
隠れドS攻めか…!(決め付け)


「……俺をからかっても面白くないですよ、須藤先輩?」

「そうかな〜?君は面白そうなものをたくさん持ってそうだけど?」


そういえばこの人って新聞部なんだっけ。
ってことは様々な情報を扱ってたりするんだよな。
可能性としては情報屋って事も有り得る…

裏の顔説ktkr!!


「言っておきますけど、俺は貴方の求めるような"情報"は持ってないですから」


にっこりと笑って言うと、目の前にいる須藤先輩は一瞬だけ驚いた顔をして、ニヤリと笑った。


「…あのさ、『東雲家の三男』って知ってる?」

「………………いえ」


やばいやばいやばい。

ぴくり、と肩が揺れそうになるのをなんとか堪え、須藤先輩を見遣る。


「あの有名な東雲家に長男と次男がいるのは世間にも知られているが…"三男の存在"は公表されていない。当然だろうね、世間が知っている東雲家は"2人兄弟"だからね」

「……………」

「だが、…数年ほど前から一部の人間の間で三男説が生まれてきた………………何故だか分かるかい?」


俺の頬に添えていた手を懐に入れ、一枚の写真を取り出した。
それを俺の目の前に見せ付けるように上げる。

それに写っていたのは…









「とある人物によって"コレ"が撮られたからだよ」


優しげに微笑む母親と東雲家の兄弟に囲まれて楽しそうに笑っている俺の姿があった。






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あきゅろす。
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