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「……いい湯だ…」
景色もいいし温泉は気持ちいいし会長たちは成川くんの裸を見てそわそわしてるし…最高ですな。
「寝るなよ、椿」
「武」
露天風呂の岩に背中を預け、空を仰ぎ見ていると、ひょっこりと武の顔が現れた。
「俺の所に来てる場合じゃないだろうが。成川くんの貞操を奪えコラ」
「温泉くらいじっくり浸からせろ。そしてお前は沈め」
そう言いながら大きくため息をつき、俺の隣へ入ってきた。
まぁ確かに、せっかくの温泉だしな。
たまには静かにしてるか。
「…………」
目を閉じ、岩にもたれ掛かると静まり返った空間に露天風呂の水音だけが響く。
こういう静寂は好きだ。
心が安らぐ。
「…………武?どうした?」
不意に視線を感じ、目を向けると武と目が合った。
問いかけると、パッと顔を逸らされ、また沈黙。
……よく分からん。
「…………なぁ、椿…」
「ん?」
しばらくすると、ポソリと洩らす。
が、視線はどこか遠くを見ている。
「…もし、俺がお前のコト―……」
バン!!
「あー!!椿こんな所にいたのかー!!武も!」
「!」
武の言葉は中から現れた成川くんの声で掻き消され、俺には届かなかった。
「〜〜ッッこのスーパーウルトラKY!!」
「ぇえーーー!?武が怖ぇええ!!!」
「おいコラァ!雫に勝負を仕掛けるたぁいい度胸じゃねぇかてめぇ!!」
「僕も受けて立つよ…!」
露天風呂の中で4人が暴れまくる。
何このカオス。
どうしてこうなったんだ。
「………山田くんも苦労してるんだな…」
へー…あいつ苦労してんだな。
何に苦労してるか分からないけど。
「この後どうします?璃人さん」
「そうだな…6時まではまだ時間あるし、適当に遊戯場で寛いでから部屋に戻るか」
「遊戯場なんてあるんですか、楽しそう」
やっぱ風呂上がりに卓球とか?
温泉の醍醐味だな。
ふふふ…浴衣で卓球をする成川くんに攻めズ達のジュニアも落ち着かないだろうな!
ビバ浴衣!
カモン肌チラ!
ならば実行あるのみ!
「成川くん」
「!何何!?椿!」
俺が声をかけると、成川くんは目を輝かせながら(髪でよく見えないが)駆け寄ってきた。
一瞬、犬の尻尾らしきものが見えたのは気のせいだと思いたい。
「俺と遊ばない?」
「…っ!!」
疑問形で聞くと、成川くんの顔がボンッと勢いよく真っ赤になった。
すみません、今のどこにそうなる要素があったのか分からないんだけど。
「おいコラ待てぇ!!遊ぶってなんだぁ!!●●●か!?それとも×××××か!?はっ倒すぞてめぇ!!」
「………………自重しろよ」
「…………(椿に言われたくないだろ)」
ん?武くん?
何かなその白い目は?
というかそういう意味の"遊ぶ"じゃないんだけど。
なんつー勘違いしてんだあのバ会長。
副会長も呆れて遠い目を……あれ?
何か副会長笑ってないか?
「×××××か…いいね…」
ぁあ…ダメだ。
あの人は存在が18禁だった。
「おい東雲椿…てめぇに雫は渡さねぇ。勝負しろ」
「…………………あ?」
おかしい。
おかしすぎる。
俺はただ成川くんの浴衣や、肌チラを見て悶える攻めズ達が見たいだけなのに。
どうしてそうなるんだ?
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