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チャイムを鳴らしてきたのは武だ。
どうやら寝ていたらしく、俺の送ったメールを見て部屋に来た。
『俺の部屋に面白いのが来てるぞ』
玄関で不機嫌そうな顔をした武を出迎え、さっそく中へ招く。
俺はと言えば、内心ドキワクしている。
「こいつは君の同室者、山田武だ」
「………………え」
あれ、なんでそんなに驚くんだ?
「おい…椿。どういう事だ…」
あきれ顔の武。
何故自分の同室者が俺の部屋にいるのか気になるんだろうな。
いっちょ前にジェラシーかこの野郎っ。
「まぁ俺のせいで成川くんが気絶しちゃって、俺がここに運び入れたって事だ」
「えっ…ちょっ、待って!」
放心状態の成川くんがあわあわしながら俺を見る。
「どうした?」
「アンタ、なんで俺の名前!?つーか俺の同室者ってアンタじゃないのか!?」
「ぁあ、名前はカードキーで見たんだ。そんで、同室者はこいつだよ」
まじかよー、と呟きながら床に座り込んだ。
これはまさか…
嫌よ嫌よも好きの内!?
『こんな奴と同室なんか嫌だね!』と最初は言いつつ、段々とお互いの事を知っていく…
そして普段は見せない意外な一面に次第と心を奪われ、『最初はお前なんか嫌いだった…でも、今は…』『…俺もだ』
とか!?
良いね!
やっぱ同室者最高!!
「むぎぎぎ」
「俺で妄想すんなっつってんだろうが…!」
何故分かった。
「そっか、俺を運んでくれたのってアンタだったのか。ありがとな」
「いや。元はと言えば俺のせいだからな」
一通り、今までのことを話しておいた。
さて。
それはさておき、俺の目の前にいる成川雫くん。
怪しいと思いませんか?
怪しいですよね。
だって見た目はもっさりとした髪に今時見かけない瓶底眼鏡。
その外見に似合わないしゃべり方に態度。
しかも、どうやら外部新入生は成川くんを入れて3人らしい。
王道の匂いがプンプンする!
一気に聞いてみたいが、警戒されてしまったら元も子ない。
少しずつ、慎重に化けの皮を剥ぐとしますか…
「成川くん」
オレンジジュースをこくりと飲んでいる成川くんに話しかける。
「ん?」
「カツラ、ずれてる」
「ぅえ!?嘘ぉ!?」
「うん。嘘」
沈黙が部屋に流れた。
動揺した拍子にコップを倒したが、成川くんはそれどころじゃないらしい。
「う、嘘…?」
「椿…お前……」
武までもが驚いた顔している中、俺だけは笑顔を崩さなかった。
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