3 チャイムを鳴らしてきたのは武だ。 どうやら寝ていたらしく、俺の送ったメールを見て部屋に来た。 『俺の部屋に面白いのが来てるぞ』 玄関で不機嫌そうな顔をした武を出迎え、さっそく中へ招く。 俺はと言えば、内心ドキワクしている。 「こいつは君の同室者、山田武だ」 「………………え」 あれ、なんでそんなに驚くんだ? 「おい…椿。どういう事だ…」 あきれ顔の武。 何故自分の同室者が俺の部屋にいるのか気になるんだろうな。 いっちょ前にジェラシーかこの野郎っ。 「まぁ俺のせいで成川くんが気絶しちゃって、俺がここに運び入れたって事だ」 「えっ…ちょっ、待って!」 放心状態の成川くんがあわあわしながら俺を見る。 「どうした?」 「アンタ、なんで俺の名前!?つーか俺の同室者ってアンタじゃないのか!?」 「ぁあ、名前はカードキーで見たんだ。そんで、同室者はこいつだよ」 まじかよー、と呟きながら床に座り込んだ。 これはまさか… 嫌よ嫌よも好きの内!? 『こんな奴と同室なんか嫌だね!』と最初は言いつつ、段々とお互いの事を知っていく… そして普段は見せない意外な一面に次第と心を奪われ、『最初はお前なんか嫌いだった…でも、今は…』『…俺もだ』 とか!? 良いね! やっぱ同室者最高!! 「むぎぎぎ」 「俺で妄想すんなっつってんだろうが…!」 何故分かった。 「そっか、俺を運んでくれたのってアンタだったのか。ありがとな」 「いや。元はと言えば俺のせいだからな」 一通り、今までのことを話しておいた。 さて。 それはさておき、俺の目の前にいる成川雫くん。 怪しいと思いませんか? 怪しいですよね。 だって見た目はもっさりとした髪に今時見かけない瓶底眼鏡。 その外見に似合わないしゃべり方に態度。 しかも、どうやら外部新入生は成川くんを入れて3人らしい。 王道の匂いがプンプンする! 一気に聞いてみたいが、警戒されてしまったら元も子ない。 少しずつ、慎重に化けの皮を剥ぐとしますか… 「成川くん」 オレンジジュースをこくりと飲んでいる成川くんに話しかける。 「ん?」 「カツラ、ずれてる」 「ぅえ!?嘘ぉ!?」 「うん。嘘」 沈黙が部屋に流れた。 動揺した拍子にコップを倒したが、成川くんはそれどころじゃないらしい。 「う、嘘…?」 「椿…お前……」 武までもが驚いた顔している中、俺だけは笑顔を崩さなかった。 [*前へ][次へ#] [戻る] |